イ・ジヌクの強みは“浸透力”にあり 『エスクワイア』で体現した冷徹さの中にある温かみ

 無愛想な男も、誰もが感情移入できるような平凡な男も、アナウンサーや客室乗務員など人前に立つ職業も全て自分のものとして落とし込んできたイ・ジヌク。優しさも強さも感じられる彼の佇まいは、どんな役柄にも変身できて、静かにその世界観に入り込むような浸透力がある。

 それは『エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち』で今回演じている役柄でも例外ではない。無愛想だが、家に帰れば女性と愛犬ハッシュと戯れている幸せだった頃のビデオを観返すソクフン。毎週金曜にはハッシュのお迎えに行って、しばらく離れるというルーティーンだ。ハッシュといる時はとても幸せそうな笑顔で、仕事をしている時とは表情が大きく異なる。そんなイ・ジヌクが醸し出す、どこか心の重さを漂わせるオーラが観る者の興味を刺激する。

 未だソクフンのプライベートは多くの謎に包まれているが、彼を良く知る人曰く「心の奥は温かい人」らしい。依頼人に寄り添い、訴えかける姿からは、いつも新人に見せる堅物さとは異なる人間味が滲み出ていた。また彼は、“給料泥棒”など不当に利益を得ようとしている人間には真っ向から正論をぶつけ、誰を敵にしようと気にしない。その強さは本当の強さなのか、もしくは強く見せているのか、これから彼の本来の顔が見えてくることだろう。

 さらに本作の大きな見どころは、新人弁護士ヒョミンとの掛け合いだ。彼女は名門大学を首席で卒業したほどの秀才だが集中力が高すぎるあまり、時間に遅れたり、服装に清潔感が無かったり、さらには“報連相”をせずに独断で動いたりと細かなところが抜けていて、悪い意味でソクフンに目をつけられている。しかし彼女の着眼点は他の弁護士と比べても群を抜いていて、ソクフンも次第に彼女の実力を認めるようになっていく。

 第2話の最後には、ソクフンとヒョミンが一緒に夜のオフィスで紅茶を飲み、事件について振り返った。その際にソクフンは「愛する人が苦しんでるのに見捨てるヤツはただの薄情者だ」と言い、今まで見せなかった柔らかな笑みを見せた。きっとこの2人の力によって、様々な事件と人間という生き物の本質、そしてヒョミンが入社してすぐに言っていたような“愛”が描かれていくのだろう。まだ物語は始まったばかり。これから毎週、どのような事件を解決して、どのような愛への理解を深めていくのか期待が高まるばかりだ。

■配信情報
『エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち』
Netflixにて独占配信中
出演:イ・ジヌク、チョン・チェヨン、イ・ハクジュ、チョン・ヘビン、キム・ウィソン、キム・ヨジンほか
制作:キム・ジェホン、パク・ミヒョン
(写真はJTBC公式サイトより)

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