『あんぱん』『あさが来た』『ゲゲゲの女房』も 朝ドラが描き続ける“結婚の価値観”の変化

 みね子とほぼ同世代だと思われる、『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)の2代目ヒロイン・るい(深津絵里)も、岡山から大阪へ出て働いていた先で出会ったトランペッター・大月錠一郎(オダギリジョー)と大恋愛の末に結婚する。身寄りのない孤独な二人は、親類も誰もいない土地で、裸一環で自分たちの家族を作っていく。「核家族」という形が始まった時代だともいえるだろう。

「朝ドラヒロインらしいヒロイン」なんてどこにもいない “カウンターヒロイン”の15年史

9月30日から「連続テレビ小説」第111作『おむすび』(NHK総合)が放送を開始した。本作は、元号が平成に変わるその日に生まれた…

 1980年代を舞台にした『半分、青い。』(2018年度前期)は、ガールズパワー全開の時代。主人公の楡野鈴愛(永野芽郁)は、漫画家として活躍する夢を追いかける。しかし、デビューはしたものの才能に限界を感じて挫折。バイト先で知り合った映画監督志望の森山涼次(間宮祥太朗)と結婚することにする。鈴愛は、神前式で結婚式を挙げるのだが、角隠しのまま派手にツンのめって転んでしまう。それが行く末を暗示していたのか、子どもができたのにも関わらず、家庭を顧みない涼次とすれ違い、離婚することに。シングルマザーとなった鈴愛は、紆余曲折しながらも自分らしい生き方を模索し続ける。アラフォーになった頃に、初恋の人・萩尾律(佐藤健)と一緒に仕事をするようになり、ついにその想いを遂げる。二人は結婚という形をとるかは明示されないが、きっと二人なりの自由な形で歩んでいくに違いない。

 戦前から戦中の結婚では、どんなピンチがあっても結婚したからには二人で乗り越えていくといった物語が多く、継続することで強まっていく絆もあるのだと気づかされる。一方で、現代的な人生観からすれば、自分のキャリアや理想を曲げてまで結婚することはないし、継続しがたい困難があれば離婚することもあるだろうと思う。そこには、人生を自分でデザインしていく大胆さや清々しさがある。

 いずれにしても、結婚生活は平坦な一本道ではない。『あんぱん』ののぶと嵩の身にも、これからさまざまな困難があるに違いないし、お互いに個性の強い二人のことだから、葛藤が生まれることもあるだろう。二人がどう乗り越えていくのか、見守っていきたい。

『あんぱん』最高のキスシーンの舞台をなぜトイレに? のぶと嵩がたどり着いた幸せの形

朝田のぶ→若松のぶ→柳井のぶ。第89話でのぶ(今田美桜)がついに「柳井のぶ」になった。  NHK連続テレビ小説『あんぱん』第1…

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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