志田未来、安達祐実、伊藤淳史はなぜ起用され続ける? ドラマを支える“子役出身者”の安心感

 子役が健闘したドラマは長きにわたって語り継がれることが多い。

 この夏から始まったドラマでも、『誘拐の日』(テレビ朝日系)で斎藤工とのバディ役で圧巻の演技を見せる永尾柚乃、前クールの『対岸の家事』(TBS系)に続いて『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)でも愛らしさの中に凄みを感じさせる演技を披露した永井花奈、『こんばんは、朝山家です。』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で自閉スペクトラム症の男児を自然体に演じる嶋田鉄太など、多くの子役たちが活躍中だ。

 その一方で、今期はかつて一世を風靡した元子役たちが確かな演技力で脇を固めている作品も多数見受けられる。

志田未来

『北くんがかわいすぎて手に余るので、3人でシェアすることにしました。』©︎カンテレ

 2005年放送の『女王の教室』(日本テレビ系)で当時わずか12歳ながら迫真の演技を見せ、一躍ブレイクした志田未来。『14才の母~愛するために 生まれてきた~』(日本テレビ系)では中学生で妊娠したヒロインが、戸惑いながらも出産という選択を掴み取るまでの揺れ動く心情を繊細に表現し、第15回橋田賞新人賞を史上最年少で受賞した。

 そんな志田は30代に突入し、急速に出演作を伸ばしている印象がある。特に反響を呼んだのは、前クールの『なんで私が神説教』(日本テレビ系)で見せた狂乱っぷりだろう。志田が演じた愛花は主人公の静(広瀬アリス)が受け持つ名新学園2年10組の元担任で、静の言葉が妹を死に追いやったと思い込んでいる役どころ。静への恨みを沸々と募らせ、ついには生徒たちの前で彼女を罵るという行動に出る。序盤はトーンを抑えつつ、徐々に怒りの感情を爆発させる志田の演技は圧巻だった。

 現在放送中の『北くんがかわいすぎて手に余るので、 3人でシェアすることにしました。』(カンテレ・フジテレビ系)では一転、北くん(岩瀬洋志)に想いを寄せる真面目なパン屋の店員・東子を好演中。等身大の女子像を体現しながらも、ふとしたリアクションや行動からクスッとくるような可笑しみが溢れ出る。そのデフォルメとリアリティのちょうどいい塩梅を狙えるのは長年のキャリアを持つ志田だからこそだろう。

安達祐実

『誘拐の日』©テレビ朝日

 『家なき子』(日本テレビ系)もまた、当時12歳だった安達祐実の名演とともに語り継がれる作品。理不尽な環境下で逞しく生きる少女に扮する安達の肝が据わった演技は当時、お茶の間に衝撃を与えた。以降も第一線で活躍し続け、2023年には芸歴40周年を迎えた安達。ここ数年の彼女は過酷な運命を背負った妻役の請負人となり、再び世間に激震を走らせている。

 2024年10月期に放送された『3000万』(NHK総合)で安達が演じたのは、大金に目が眩んだ結果、闇組織に取り込まれて犯罪の片棒を担がされる妻。明日の命さえも保障されない非日常の中で普通の主婦が徐々にモラルを踏み外していく過程を圧倒的なリアリティで見せた。額に青筋をも浮かべる安達の熱演ぶりに息を呑んだ人も多いだろう。

 『夫よ、死んでくれないか』(テレビ東京系)では夫が不倫した挙句に失踪し、複雑な感情を抱く妻を演じた。そのタイトルから放送前に物議を醸した本作が、いざ始まると視聴者から共感の声も上がっていたのは安達の繊細な心理表現に依るところが大きいのではないだろうか。特に最終回で見せた泣き笑いの演技からは夫に対する愛憎渦巻く感情がひしひしと感じられ、戦慄すると同時に胸を締め付けられた。

 そんな安達は今期も妻役でインパクトを残している。主人公の政宗(斎藤工)が娘の手術費を捻出するために裕福な病院長の娘・凛(永尾柚乃)を誘拐することから始まる『誘拐の日』(テレビ朝日系)。安達は政宗に誘拐を指示する妻・汐里を演じており、序盤から只者ではないオーラを醸し出していた。第3話では、3年前に政宗と娘のもとを去った理由を涙ながらに語った汐里だが、本当か嘘か分からない演技が絶妙。最後まで油断ならない存在である。

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