『スーパーマン』に仕込まれたトリビアの数々 原作コミックや過去作からネタバレありで解説
こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします!
今回は7月11日に公開されるやいなや大反響を巻き起こした『スーパーマン』。本作に仕込まれた様々なネタ(トリビア)を解説します。『スーパーマン』のリピート鑑賞のお供にぜひお役立てください。
※本コラムはネタバレ全開なので、まだ『スーパーマン』を観てないという方は注意してください
『スター・ウォーズ』手法(ないし『名探偵コナン』手法)を取り入れたオープニング
かねてよりジェームズ・ガン監督は本作においてスーパーマンのオリジン(誕生秘話)を描かない、と明言していました。その代わり冒頭のテロップでこの映画を楽しむためのスーパーマンまわりの設定や背景をすべて説明するという手法をとっています。すべて3づくし(3世紀前に超人=メタヒューマンが現れ~3分前にスーパーマンが敗北する)で語るというのも面白いですね。この手法は『スター・ウォーズ』映画における冒頭の黄色いテロップや『名探偵コナン』の始まりでコナンくんが自分の素性を語るのと同じです。
このテロップで超人=メタヒューマンの登場によりGODS&MONSTES(神々と怪物たち)の時代が始まったと説明されます。要はスーパーヒーローとスーパーヴィランが混在する世界が生まれたということでしょう。
このGODS&MONSTESはガン監督がDCユニバース(DCU)構想を立ち上げた際、DCUの最初の段階=チャプター1/第1章をくくるコンセプトとして使っていた言葉です。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)におけるフェーズ1ないしインフィニティ・サーガみたいな意味合いかと思います。
バットマンとのリンク、そしてホール・オブ・ジャスティスの壁画に注目
高速道路の標識に“GOTHAM CITYはこっちのレーン”的な指示が書かれています。また街中の屋外モニターに送るニュース映像の中に“洪水の被害が出ている”みたいなことが報じられています。海外のファンの中では、これはロバート・パティンソンの『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のクライマックスで描かれたゴッサムの街が洪水に襲われたあの事件を指しているのでは?との意見が出ています。
ジャスティス・ギャングたちの基地であるホール・オブ・ジャスティス。この外観はコミックや1970年代に作られた、ジャスティス・リーグをベースとした子ども向けアニメ『スーパー・フレンズ』のそれとそっくりです。そしてちらっとですが中の壁画に、過去に活躍したと思われるヒーローたちの姿が描かれています。
僕が確認できたのはブラックキャット(元ボクサーで黒猫を模したコスチュームを着た男性ヒーロー)、初代フラッシュ(赤いコスチュームではなく、俊足の神ヘルメスを模したヘルメットを被っている)ですが、他にもたくさんのヒーローの様子が書かれています。コミックではブラックキャットや初代フラッシュはJSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)のメンバー。たぶんこのホール・オブ・ジャスティスはJSAの頃から使われており、いまはジャスティス・ギャング、そして将来的にはDCU版ジャスティス・リーグの基地になるのでしょうか?
エンジニアはコミックではジ・オーソリティというヒーローチームのメンバー。このジ・オーソリティもDCUに登場するのか? その時はエンジニアはヒーローとして描かれるのか? 興味深いです。
映画の最後でレックス・ルーサー(ニコラス・ホルト)が収監されるベル・レーヴ刑務所は、スーサイド・スクワッドの面々が収容されていた極悪人専門の刑務所です。
クリストファー・リーヴ版『スーパーマン』からのオマージュ
本作は1978年(日本公開1979年)のクリストファー・リーヴ版『スーパーマン』へのオマージュに満ちています。まずジョン・ウィリアムズのあのテーマ曲をアレンジして使っていることがなによりの証拠。エンドクレジットのスタッフ、キャストの名前の出し方もリーヴ版を意識。内容的にもかなりこの1978年の映画となぞらえている部分があります。リーヴ版には、映画オリジナルのキャラとしてイブとオーティスが登場。2人ともルーサーの手下でした。今度の『スーパーマン』にもこの2人が出てきます。イブはリーヴ版ではルーサーを裏切りスーパーマンを助けます。今回も彼女の裏切りでスーパーマンたちは勝利しますよね。
またオーティスはリーヴ版では間抜けなルーサーの部下でしたが、本作ではウルトラマンをカメラ越しに操るグループのリーダー的立場です(あの恰幅のいい黒人です)。リーヴ版ではルーサーがスーパーマンを呼び出す時に特殊な音波を使ってメッセージを送ります。その音は人間には聞こえず犬とスーパーマンだけが反応するというもので、だからルーサーの呼びかけに街中の犬が反応します。本作のクライマックスでスーパーマンが口笛を使ってクリプトを呼ぶのはこのシーンを意識していたのかも。
またリーヴ版ではルーサーの企みは超大規模な不動産犯罪なのです。本作でルーサーがボラビアの土地を手に入れ自分の名のついた国を作るというくだりでこの設定を思い出しました。リーヴ版ではロイスがスーパーマンに記者としてインタビューする場面があります。ここで2人の関係が大きく進展しますが、本作でもロイスとスーパーマンとインタビューのシーンは重要ですよね。
さて本作における、クリストファー・リーヴへの最大のリスペクトは、リーヴの実子であるウィル・リーヴがカメオ出演していることでしょうか。彼は本作に出てくるニュースレポーター役。現場から中継みたいな感じで映ります。実生活でも彼はABCニュースの特派員です。
今回はレックス・コープではなくルーサー・コープなのか?
スーパーマンの宿敵であるレックス・ルーサーが率いる会社ルーサー・コープが出てきますが、映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)で、ジェシー・アイゼンバーグが演じたレックス・ルーサーの会社はレックス・コープでした。なぜ今回ルーサー・コープにしたんでしょうか?
実はガン監督はスーパーマン/クラーク・ケントの青春時代を描いた『ヤング・スーパーマン』に登場するレックス・ルーサーをかなり意識したようです。このドラマではルーサー・コープでした。そしてこのドラマでルーサーを演じたマイケル・ローゼンバウムはガン監督のお気に入りの俳優でもあり、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の2作目と3作目にちょい役で出ています。今回ローゼンバウムはルーサー率いる機動武装部隊ラプターズの一人の声を担当しています。
ジェームズ・ガン組の俳優が多数参加
本作は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』やジェームズ・ガン監督にゆかりのある俳優が多数出演しています。まず『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのロケットの声を担当しているブラッドリー・クーパーがスーパーマンの実の父ジョー・エル役、マンティスを演じたポム・クレメンティエフ、ヨンドゥ役のマイケル・ルーカーがスーパーマンの要塞で活躍するロボットの声を演じています。
本作でルーサーの下で働いているヘザー役のダーラ・デルガードは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023年)に出てくるカウンター・アースの、コウモリ獣人女性を演じていました。
またガン監督の妻で『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)、『ピースメイカー』(2022年~)のエミリア・ハーコート役のジェニファー・ホランドも同じくロボットの声を担当。ガン監督の弟で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのクラグリン役でおなじみのショーン・ガンはジャスティス・ギャングを支える億万長者のマックスウェル・ロード役です。なおこのキャラは『ワンダーウーマン1984』(2020年) でペドロ・パスカルが演じていました。