『ダンダダン』『光が死んだ夏』『ゲ謎』が同時期に “因習村”がシンクロする2025年の夏

人間のおぞましい欲望を表現した因習村!『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』本予告[11.17(金)公開]

 2025年の作品ではないが、7月12日には「因習村もの」の代表格といえる映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が地上波で初放送された。

 同作の舞台となる「哭倉村」は、日本の財政会を裏で牛耳る大企業「龍賀製薬」を経営する龍賀一族が支配する村。表向きは平和な雰囲気を漂わせているが、その裏には数多の人間と“人ならざる者”を生贄とし続けてきたという恐ろしい実態がある。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』 ©︎映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会

 龍賀一族は不老著樹の秘薬「M」を特別な客に卸し、莫大な富を得ているのだが、その方法がなんとも極悪非道。劇中終盤で暴かれる精製場の惨状は、まさにこの世の地獄というべき有様だ。

 ほかにも龍賀一族には血筋を重視した強制的な近親相姦の習慣もあり、富と権力に取り憑かれた人間の醜悪さがこの上なくグロテスクに表現されている。その上で「哭倉村」は日本社会の歪みを象徴するものとしても描かれており、他人事のように「因習村は怖い」で済ますことができない風刺性を帯びている。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』 ©︎映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会

 なお同作はTVアニメの第6期とつながるストーリーとなっているが、そこではいくつかのエピソードで因習村に近い題材が登場していた。

 たとえば第70話では、タイタンボウ様という神が祀られている「入らずの山」が舞台に。掟を守らなければ恐ろしい祟りが襲い掛かると言い伝えられており、実際にその犠牲になった人々の姿も描かれる。そんななか、山の番人となる一族に生まれた青年が、役目から解放されるために御霊石を壊そうとする……。

 また第65話では、鳥取県が日本から独立して「大鳥取帝国」になるというエピソードが登場。別世界となった鳥取では、「マスコットキャラのなしトリオ様が通る時には、深くかしこまらないと不敬罪になる」など奇妙な法律が施行されており、鬼太郎やねこ娘たちが「鳥取侮辱罪」で逮捕されるという展開が描かれていた。

 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を楽しんだ人は、ぜひTVアニメ第6期もチェックしてみてほしい。

 なおアニメではないが、8月8日には背筋による人気ホラー小説を原作とした実写映画『近畿地方のある場所について』が公開される。同作は近畿地方の“とある一帯”に秘められた怪異や因習にまつわる不可解な事件を紐解いていくストーリーで、一種の「因習村もの」として構成されている。

 因習村ブームの到来を感じざるを得ない2025年の夏。今後もオリジナリティあふれる怪作が生み出されることを期待したい。

■放送・配信情報
TVアニメ『ダンダダン』
第1期:各配信サイトにて全話順次配信中
第2期:MBS/TBS系スーパーアニメイズム TURBO枠にて、毎週木曜0:26〜全国同時放送
キャスト:若山詩音(モモ/綾瀬桃)、花江夏樹(オカルン/高倉健)、水樹奈々(星子)、佐倉綾音(アイラ/白鳥愛羅)、石川界人(ジジ/円城寺仁)、田中真弓(ターボババア)、中井和哉(セルポ星人)、大友龍三郎(フラットウッズモンスター)、井上喜久子(アクロバティックさらさら)、関智一(ドーバーデーモン)、杉田智和(太郎)、平野文(花)、磯辺万沙子(鬼頭ナキ)、田村睦心(邪視)
原作:龍幸伸(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:山代風我
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:恩田尚之
宇宙人・妖怪デザイン:亀田祥倫
アニメーション制作:サイエンスSARU
第1期オープニングテーマ:Creepy Nuts「オトノケ」
第1期エンディングテーマ:ずっと真夜中でいいのに。「TAIDADA」
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
公式サイト:https://anime-dandadan.com/
公式X(旧Twitter):@anime_dandadan

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