髙橋海人の“憑依”っぷりから目が離せない 『DOPE』での瑞々しさと無力感のコントラスト
深い悲しみを抱えていることを感じさせる瞳の演技から、目が離せない。放送中のドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系/以下『DOPE』)で、新人の麻薬取締官・才木優人を演じるKing & Princeの髙橋海人。今作で演じる才木は、生まれつき「未来予知」の特殊能力を持つがゆえに、未来を変えられない自身の無力さに苦悩する青年だ。そんな彼が、中村倫也演じる冷徹なベテラン麻薬取締官・陣内とバディを組み、麻薬組織と対峙していく。本作は特殊能力を使ったバトルものの側面を持つ作品でもある。
アイドルとして光を放つ一方で、俳優としてのキャリアを着実に積み重ねてきた髙橋が、今作ではどのような扉を開こうとしているのか。
役柄への“憑依”と表現力の進化
髙橋が俳優としての高いポテンシャルを広く知らしめたのは、記憶に新しいドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)でのオードリー若林正恭役だろう。極度の人見知りでありながら、お笑いへの情熱を燃やす若林の青年期から現在までを、驚くほどの再現度で演じきった。声や話し方、表情、身体の角度に至るまで、若林が“憑依”したかのような演技は、「演技力だけではない、もはや若林さんになっている」と絶賛された。
『だが、情熱はある』は背中を押してくれる作品だった 髙橋海人と森本慎太郎がくれた勇気
「出会えてよかった」と思えたドラマだった。これから、自分が“なにもの”になればいいのか分からなくなった時。どこまで走り続ければい…特に印象的だったのは、「たりないふたり」解散ライブ冒頭の再現シーンや、第5話で若林が春日(戸塚純貴)に向かって本音を吐露するシーン。絞り出すようなセリフの言い回しで、若林が抱える深い苦悩と葛藤が痛いほどに伝わる繊細な演技を見せた。役作りにあたり、若林のラジオを聞き、エッセイを読み込んだと語るエピソードからも、髙橋の観察力と役への深い没入度を物語っている。
『だが、情熱はある』髙橋海人の“惹きつけ力”が光る 森本慎太郎の並外れた“愛され力”も
嫌なことが立て続けに起こった時、親友に「人生における幸せの量は同じにできてるんだよ。だから次は絶対にいいことがある!」と励まされ…続く主演ドラマ『95』(テレビ東京系)では、1995年を舞台に、内気で劣等感を抱える高校生・Qこと、広重秋久を演じた。「世界が終わるのでは?」という不安に取り憑かれ、様々な行動を起こしていく若者たち。髙橋の演技は感情の解像度や表現力の高さで評価され、繊細さや内面の複雑な感情をリアルに浮かび上がらせた。
特に、普段大きな声を出さないQが警察に補導されかける前に声を張り上げたシーンでは、不器用さと懸命さが伝わる人間味あふれる演技を見せた。『だが、情熱はある』に続き、劣等感を抱える人物を巧みに好演。また、終盤の乱闘シーンで見せた身体能力の高さには、幼少期から培ってきたダンススキルが表現の幅を広げたことがうかがえた。目の動きや表情で表現する“静”の演技と、身体全体を使った“動”の演技の両面を兼ね備えている点が、髙橋の俳優としての魅力と言えるだろう。