宇野維正の映画興行分析

ハリウッド人気シリーズも日本では配信スルー 『ザ・コンサルタント2』が象徴する時代の変化

 6月第1週の動員ランキングは、トップ3に変動なし。2週連続1位となったのは『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』。週末3日間で動員43万2000人、興収6億5200万円。累計動員は177万9400人、累計興収は27億4300万円。2位は公開7週目の『名探偵コナン 隻眼の残像』。週末3日間の動員は24万2000人、興収は3億4600万円。公開から45日間の累計動員は921万2900人、累計興収は133億2300万円。3位は公開6週目の『マインクラフト/ザ・ムービー』。週末3日間の動員は14万人、興収1億6600万円。公開から38日間の累計動員は276万8500人、累計興収は36億700万円。

 公開前は苦戦を予想する声もあった『マインクラフト/ザ・ムービー』は、『ウィキッドふたりの魔女』の累計興収35.1億円を超えて、現時点においてアニメーション作品を含む2025年外国映画のトップに立った。邦高洋低になって久しい国内の映画興行だが、ゲーム原作とはいえ、こうして実写映画の新しいヒットシリーズ(正式発表はまだされてないが、ジャレッド・ヘス監督は続編の製作について言及している)は生まれている。一方、今週映画ファンの間で衝撃が走ったのは、2017年1月に日本公開されたギャヴィン・オコナー監督、ベン・アフレック主演『ザ・コンサルタント』の続編、『ザ・コンサルタント2』が日本では劇場公開されずにAmazonのPrime Videoで6月5日から独占配信されることが明らかになったことだった。

 2016年10月に北米公開された『ザ・コンサルタント』の北米配給及び世界配給はワーナー・ブラザース、2025年4月に北米公開された『ザ・コンサルタント2』の北米配給はAmazon MGM Studio、世界配給はワーナー・ブラザース。長らく資金難に陥っていたハリウッドの老舗メジャースタジオMGMは、2021年にAmazon傘下となって以降、Amazonの豊富な資金力をバックに積極的に中規模作品の製作や配給をおこなってきた。Amazon MGM Studioが『ザ・コンサルタント2』の配給権をワーナー・ブラザースから獲得したのは2024年2月。今作からプロデューサーにも名を連ねているベン・アフレックは、以前からハリウッドの中規模予算の実写映画の存続危機について積極的に発言してきたが、今回の配給権の移譲も、続編の製作及び北米公開を万全なかたちで実現する上では必要な施策だったのだろう。

 もっとも、ハリウッドのメジャースタジオにとってはあくまでも自国(北米)での興行が中心で、大手配信プラットフォーム傘下のスタジオが北米配給を手がけ、世界配給を別のメジャースタジオが手がけることになった場合、世界配給を引き受けたメジャースタジオが積極的な宣伝活動をしなかったり、今回のように国や地域によっては劇場公開が見送られるケースも増えている。特にAmazon MGM Studioには、近年優れた企画やエメラルド・フェネルやルカ・グァダニーノのような現在第一線で活躍している監督が集まってきただけに、日本の映画ファンにとっては相当悩ましい状況が生まれている。コロナ禍以降の映画業界の再編、日本国内の実写外国映画興行の低迷など、原因は一つではないが、いずれにせよ、北米で劇場公開される一定規模以上の作品が、当たり前のように日本でも劇場公開されるという時代はもはや過ぎ去ってしまった。

■配信情報
『ザ・コンサルタント2』
Prime Videoにて、6月5月(木)16:00より配信
出演:ベン・アフレック、ジョン・バーンサル、シンシア・アダイ=ロビンソン、J・K・シモンズ
監督:ギャビン・オコナー
製作総指揮:マット・デイモン、ギャビン・オコナー、マイケル・ジョー、ケヴィン・ハロラン、アリソン・ウィンター
脚本:ビル・ドゥビューク
製作:マーク・ウィリアムズ、リネット・ハウエル・テイラー
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『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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