映画『アンダーニンジャ』はなぜ賛否両論? 福田雄一が背負う“くだらない笑い”という業

 福田監督が注目されるようになったのは『33分探偵』(フジテレビ系)や『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)といった自身が監督と脚本を担当する深夜ドラマからで、低予算を逆手にとったチープな映像と「くだらない笑い」の応酬が、コントバラエティのようなドラマとして支持された。2017年頃からは、プライムタイムのテレビドラマと劇場映画を定期的に発表するようになっていく。福田雄一作品に対する批判がネット上で増えていくのはこの時期からだ。

 深夜ドラマで支持されたコントバラエティのような「くだらない笑い」は、良くも悪くもテレビバラエティ的であるため、映画ファンから批判されることが多い。 とはいえ、それはSNSに感想を書くような映画ファンの意見であり、福田監督作品の興行成績が極端に低いというわけではない。『アンダーニンジャ』を映画館で観た時も、ムロと佐藤の登場するシーンで「笑い」は起こっており、コントバラエティを楽しむノリで福田監督作品を楽しむ観客は確実に存在していると感じた。

 最終的には好みの問題になるため「笑い」の良し悪しを言語化することは難しい。また、コメディ映画を観て満足しても、多くの観客は「面白かった」としか思わないため、ネット上で盛り上がることは少ない。

 「笑い」を通して問題を考えさせる社会風刺ならば、社会問題に対する議論がSNSで盛り上がることもあるが、福田作品のような「くだらない笑い」を志向する映画は、そういった評価にはつながらないため、「くだらなさ」をつまらないと捉える批判的な映画ファンの意見ばかりが目立つようになる。その状況に耐えきれず、多くのコメディ作家は「笑い」を隠し味とするストーリー作家に作風を変えていった。

 実際、連続ドラマ『アオイホノオ』(テレビ東京系)のような、シリアスさを全面に打ち出した福田監督作品の評価は高い。今回の『アンダ―ニンジャ』もシリアスに寄せたことで成功しており、「くだらない笑い」がなければさらに評価されていた可能性もゼロではない。

 その意味でシリアス路線に行くのも悪くないとは思うのだが、おそらく福田監督にとって「くだらない笑い」は、構成作家としてテレビのバラエティ番組に関わっていた彼の作家性と深く結びついている「業」のようなものなので、簡単に手放すことはできないのではないかと思う。筆者も福田の「くだらない笑い」が大好きなので、批判にめげずにこのままでいてほしい。その意味で『アンダーニンジャ』のバランス感覚は悪くなかった。

 もっと「くだらない笑い」が受け入れられる世の中になってほしい。

■公開情報
『アンダーニンジャ』
全国公開中
出演:山﨑賢人、浜辺美波、間宮祥太朗、白石麻衣、岡山天音、山本千尋、宮世琉弥、坂口涼太郎、平田満、ムロツヨシ、木南晴夏、長谷川忍(シソンヌ)、佐藤二朗
原作:花沢健吾『アンダーニンジャ』(講談社『ヤングマガジン』連載)
脚本・監督:福田雄一
プロデューサー:若松央樹、大澤恵、松橋真三、鈴木大造
制作プロダクション:クレデウス
主題歌:Creepy Nuts「doppelgänger」
配給:東宝
©花沢健吾/講談社 ©2025「アンダーニンジャ」製作委員会
公式サイト:underninja-mv.com
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