相葉雅紀×大塚明夫、“濃密な時間”を共に過ごすなかで受ける刺激 「駆け引きが楽しい」

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 今回はなんとゲスト声優として相葉雅紀と大塚明夫が登場。相葉はAIモルカーを開発したベンチャー企業・メニメニアイズカンパニーのCEO、大塚は行方不明のモルカー・ドッジを捜すドッジのドライバー役をそれぞれ演じる。

 意外にも共演が続いている2人は、お互いの仕事に何を思っているのだろうか。また、声優業に挑戦が続く相葉はどのようなアプローチを心掛け、大ベテランの大塚はどのように乗りこなしているのか。インタビュー後半では、動物にまつわるほっこりとするエピソードも飛び出した。

相葉雅紀、大塚明夫が感じる『モルカー』の世界観の魅力

ーーお2人とも『モルカー』の世界で“ヒューマン”役を演じられています。それぞれ演じた役について教えてください。

大塚明夫(以下、大塚):私の役は、貧しい家庭に育ち、そして物を大切にし、それで仲間との繋がりというものを大事に生きてきて、庶民として立派にやっている人というイメージです。

相葉雅紀(以下、相葉):僕の役はすごく正義感が強くて、若いがゆえに周りがあまり見えていないのですが、己を信じて突き進むタイプの役でしたね。ちょっとクレイジーなところもあります。

大塚:クレイジーって言葉は便利だよね(笑)。

相葉:確かに(笑)。

ーーご自身に似ている部分はありましたか?

大塚:庶民的なところですかね。

相葉:絶対違いますよ!(笑)

大塚:もうバリバリの庶民なんです。

相葉:大塚さんがやると、やっぱり大塚さんが作り上げるキャラクターになるんですよね。それを近くで観ていていつも尊敬しています。僕の役はあまり僕との共通点はないかなと思います。憧れはありますけどね、CEOという響きに(笑)。

大塚:響きはね。

相葉:カッコいいですね。

大塚明夫

ーーお2人は『モルカー』という世界観や作品に対して、どのような魅力を感じていますか?

大塚:まず、モルカーたちがかわいいということがその根幹にあります。その世界観ごと、大人たちも愛でて、意外とシュールだったりするところもあって。で、何がいいって、モルカーたちは喋らないじゃないですか。なのに、表情がとても豊かで、言葉にしなくてもなんだか伝わるよねっていう。その世界観が僕は『モルカー』の魅力なんじゃないかなと思っているんですよね。

相葉:僕は、メッセージがちゃんとあるというか、ストーリーが深い作品なので、子供に向けたものでありつつ、大人も惹きつけられるんじゃないかなと思います。

大塚:しかもセリフや言葉を使わずにね。

相葉:表現力が高いですね。

ーー特に今回の映画だと結構踏み込んだ話になりますね。

大塚:そうですね。ただ、モルカーたちの普段の世界観がちゃんとあって、その上で普段テレビではやれないような、長いお話の中にちゃんと入っていけるので、今回の尺の長い、映画のモルカーたちの物語がちゃんと楽しめますね。

相葉:もう結構別作品な気がするぐらい、今回は“映画バージョン”だと思うので。『モルカー』ファンの皆さんには楽しんでいただけたら嬉しいですね。

大塚:子どもが観るものだと馬鹿にしないでね。ぜひ癒されに来ていただきたい。

ーー今回、アフレコの現場ではお2人が会うタイミングはありましたか?

大塚:すれ違いはしましたけども、一緒に収録はできなかったんです。

相葉:僕の収録は大塚さんの後だったので、大塚さんが収録したものをちょっとだけ、聞かせていただきました。

ーーお2人は最近仕事で一緒になることが多いですが、改めてお互いの印象について教えてください。

大塚:相葉くんの素敵なところって、自分の声を聞いて「これでカッコいいかな」と自分で完結しないで、ちゃんと渡してくれるので、すごくやりやすいんです。

相葉:えー、嬉しい。まず自分の声をカッコいいなんて思ったこと、一度もないです。

大塚:世の中には結構いるんですよ、自分の声に酔っちゃう人。僕もそういうふうになるまいと思って日々戒めているんですけど。 そういうふうになると、自分が喋り終わったところで完結しちゃうので、繋がっていきにくくなっちゃうんです。相葉くんは全くそれがなく、ちゃんとキャッチボールができて楽しいなって思います。

相葉:最近、大塚さんとはすごく濃密な時間を過ごさせていただいています。大塚さんは、これだけたくさんの役を掛け持ちしてやってきて、もう本当にそれぞれのハマった役を作ってこられるんです。大ベテランの方なので当たり前なのですが、そこに引っ張っていただけているんですよね。僕の役も委ねられるというか、何かを委ねて渡せば絶対に返ってくるので。そこで楽しさを感じますね。

大塚:それが楽しいか楽しくないかが、一番肝心なところじゃない。

相葉:そうかもしれないですね。確かに自分1人で想像する大塚さんが作る役と、実際に会ってやり始めて「こういう反応なんだ」「こうなんだ」とその場で初めて気付くことには違いもあって、そういうやり取りや駆け引きが楽しいです。

ーー今回はあまり共演するシーンがなかったので、また共演が見られるときが楽しみです。本作の印象的なシーンはどこになりますか?

大塚:僕の場合は、演じていて一番テンション上がったのが、やはりAIモルカーにまつわるシーンですね。クライマックスシーンは一番盛り上がりましたね。

相葉:僕の役はイケイケでやっていたものが、急なアクシデントで止まっちゃうんだけれど、それを力ずくで押していくところ。「ついてこい!」みたいに引っ張っていくところが一番気合が入りました。

ーーお2人が思う、キャラクターを演じることの醍醐味はどこにありますか?

大塚:日常の自分から逃げられるところじゃないですか。

相葉:お疲れなんですね。

大塚:うん(笑)。やっぱりね、普段自分がこれはやるべきじゃないなとか、いろいろあるじゃないですか。日常的に自分に課した枷みたいな。役の上ではそれを持っていっちゃダメなので、それを取り外せるんですよ。取り外したところで「それは役だからしょうがないじゃん」っていう大義名分があって、できるというのは、やっぱりどこかで解放に繋がってるのかなと思いますね。

相葉:僕は学校とかで座学として習ったりもないですし、現場でいろんな方々や監督とかから教えてもらったもので積み上げてきたので、台本に向かって1人で役作りをしているときは一番楽しくもあり、苦しくもあります。作った役を現場に持っていったときに「違う、その方向じゃない」と言われて、またやり直したり……そういう作業を家でやるのですが、多分その考えている時間が一番楽しいです。キャラクターを構築していく時間というか、この人はこういう性格・バックグラウンドを持っていてスタンダードのテンション感を想像したり、キャラクターを作るというところが楽しいですね。

ーーなるほど。

相葉:絵に声を当てて演じるという経験は今回で2回目なんです。なので、すごく新鮮な経験でした。絵を見ながらやるっていうのは、見た目が出来上がってるものに声でイメージをプラスしていくみたいな作業で。台本を読んで自分で作った役を持っていってアフレコをするときに、「あ、絵で見るとこういう感じなんだ、ちょっと違ったな」とかもあったりして。でもそこで対応できるように注意しながらやりました。

ーー相葉さんは声の仕事が続いています。 俳優として身体で演技をすることと、声を出して演技するときの違いは何を意識していますか?

相葉:大きくはそんなに変わらないですが、先ほど言ったように、絵だとすでに決まっているものがあります。このシーンはこの行数しか絵がないから、漏れてしまえば次のカットへ行ってしまうとか。そういう当てはめるという技術的な難しさがすごくありました。だから、声優さんたちの技術はすごいんです。そのことを改めて実感しましたし、自分にはなかなか難しいとも思ったのですが、 家でやる役作りの作業だけは変わらない気がしますね。

ーー声優の場合は求められる技術も大きくなるような気がします。

相葉:声だけで表現する難しさも感じました。というのは、身体とかアクションを封じられて、自分はそのつもりでやってるけど、この声だと伝わらないんだな、という難しさ。それは日々すごく感じます。

ーー声優業について、知人の声優の方から学ばれたりとかはありますか?

相葉:まずは、自分なりに挑戦してみて、監督に見て頂いてからどう見えますかと聞いたり、そういう作業の積み重ねです。たまたまなんです、声のお仕事が続いているのは。

大塚:どんな仕事もたいてい、たまたまですから(笑)。

ーー大塚さんはこれまでのご経験から、声だけで演じるということのポイントについてどのようなことを考えていますか?

大塚:まず、収録のスパンが短いものですから。例えば収録は1日、もしくは半日で全てをやらないといけない。そうすると、作り込んだ上でこうやってみよう、ああやってみよう、ということが許されないんです。みんなが「俺こうやってみたい」「ああやってみたい」とやってると終わらなくなってしまうので。

相葉:なるほど。

大塚:だから、“合わせる”という技術も、声優でやる場合には必要になってくるのだけれども、そればっかりで暮らしてると、じゃあ好きにやっていいよと言われたとき、手も足も出なくなっちゃったりするケースもある。そこら辺を自分で見失わないように、心がけてはいます。

ーー今回で言うと、庶民らしさを意識されたという。

大塚:そうです。まっすぐなやつで、という感じで。人間ってまっすぐな人もいるかもしれないけど、でも全部が全部そうではないですから。で、そういうところを自分の中からカリカチュアして、削ったり足したりしながら作っていくのが僕のスタイルなんです。けれども、なんたって数が多いものですから、イチから、土台から作っていくと大変なので。中にはその撮影の期間ずっとその役の気持ちになっている、なんていう役者さんもいるのですが、それが許されないスパンで僕らの仕事は回転していくので。なので、どうしてもそういう意味ではやっつけ的になることもあるのかもしれないなと、その辺はちょっと反省しなきゃいけない、忘れちゃあいけないことかなと思うんです。

ーー柔軟性が必要なんですね。

大塚:そうですね。その中にどっぷり首まで浸かっちゃうと、演技者としての大切な部分っていうのがだんだん薄れていってしまう。それは嫌だなっていう。

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