キタニタツヤ×なとり『るろうに剣心』OPに込めた思い 「すごく偏った部分を書いている」
アニソンを作るうえでのインスピレーション
ーーお二人はこれまでにもアニメとのタイアップをされていますが、楽曲のインスピレーションは、キャラクターから得ているのでしょうか? それとも世界観から?
キタニ:自分はもう圧倒的にキャラクターの心情から考えることがほとんどですね。台詞やキャラクター同士がどういう会話をしてるか。だから人間性の中身の部分みたいなものばかりです。あんまり作画のタッチがどうとか、こういう雰囲気の世界だからこういう音を当て込もうとかは、あんまりやらないですね。
なとり:僕は逆に、世界観かもしれない。キャラに寄り添った心情を書いたりもするんですけど、比較的僕は一歩引いて、全体を俯瞰して作品を書くのが結構好きなので。アニメ作品とのタイアップの時の楽曲は、そういう作り方をしてますね。
ーーアニメのオープニングには89秒という制約もあります。
なとり:そこについては、僕は短い秒数の中でどれだけ展開をつけられるかを大事にしています。例えばオケは変わらなくても、メロがクライマックスに向けて動き始めるような。短い秒数で動きをつけていくのは、アニソンならではの面白さだとも思うし、やりがいのある部分ですね。
キタニ:89秒の中でドラマを見せないといけないからね。僕も、展開が多い方がアニメーションにも合うという認識があって。ずっと同じ調子の曲だと、アニメーターさんも表現しづらいと思うので。アニメーターさんの筆が乗ってほしいという思いから、なるべく緩急をたくさんつけるようにしています。
ーーちなみに、近年はアニメの作品数が圧倒的に増えたことで、主題歌の音楽性もかなり多様化してきた印象があります。お二人はこの変化をどう見ていますか?
キタニ:確かに、10年前くらい前までは、いわゆる“アニソンの定番”みたいなものがありましたよね。でも今は、「アニメソングはこういうもの」という概念がどんどん壊されて、ある程度、作家チームが自由に作れる雰囲気がある。アニメに対する視聴者層も広がって、昔は一部のファンの間での文化だったものが、もはや一般的になってきていますし。好みも多様化して、作り手のできることがどんどん自由になってきている。クリエイター側にとっては自由でいい時代になって、その結果、主題歌としてもいろんな方向性の楽曲が出始めているんじゃないかと思います。
なとり:クリエイター的には、本当にいい時代になったと強く感じます。一方で、僕が小学生や中学生の頃に親しんだアニソンの文化も大事にしていかないといけないと思っていて。ニーズが変わる時代でも、その時代へのリスペクトは忘れずに楽曲作りをしていきたいです。
ーーさらにTVアニメだけでなく映画のアニメ作品も増え、劇伴にも歌ものを取り入れた作品も多くなっています。
キタニ:劇伴が歌ものと大きく違うのは、空間の操作の幅だと思っています。もちろん楽器1本でも劇伴として成立しますが、歌ものだと歌があるのが大前提で、それだけでも大きな縛りになるので。
ーー確かに。
キタニ:楽器1本でもある程度の空間感が出来上がるけど、映画の劇伴だとその振れ幅がもっと自由ですよね。例えば、リバーブのないバイオリン1本だと目の前で演奏しているように感じるかもしれない。でもリバーブたっぷりの大人数のオーケストラ編成だと、すごく壮大な雰囲気を出せるとか。歌ものではない劇伴は、空間操作が歌ものより自由にできるから、より臨場感が出せると思います。
ーーちなみに、音楽という視点でお二人が印象的に残っている映画作品はありますか?
キタニ:僕は、『ルックバック』『哀れなるものたち』ですね。どちらもダイレクトに音楽によってまんまと感情を引き出されてしまう感覚があって。少し気を抜くと映画の思うように転がされてしまうみたいな、危機感を抱くぐらい、音楽に存在感がある作品だと思いました。
なとり:歌の話で言うと、僕は映画では歌を先に聞いてから、映画を観に行くことが多いんです。なので、新海誠監督の作品は特に感動します。歌詞だけ先に覚えて、実際に映画で聴くと「このタイミングで流れてくるんだ!」って驚かされて。特に『天気の子』の「グランドエスケープ」。イントロの前振りが長めだからこそ、歌が始まった瞬間の映像とリンクする爆発力が、どうしても涙腺にきますね。映像が美しいので、前もって聞いていたからこその衝撃があるというか。
ーー最後に、剣心の不殺の誓いのように、お二人が音楽制作やアーティスト活動で自分に課している信念やルールについて教えてください。
なとり:僕はどちらかというと、教室の隅っこにいるような学生時代を過ごしてきたんです。だから、なかなか自分の思っていることを言えない人や、クラスの中の少数派の人たちに向けて「君たちの味方だよ」って伝えるような曲を作りたいと、いつも思っています。最初の頃は、クラスの人気者の視点を憑依させて書こうとしたこともあったんですけど、上手くいかなくて。自分が端っこにいた経験があるからこそ、そういう人たちに向けた言葉はたくさん出てくるんですよね。そのマインドを持ち続けて、これからも楽曲制作をしていきたいです。
キタニ:僕は自分の言いたいことや、美しいと思うメロディーを最優先にするっていうのは絶対にぶらさないようにしてます。曲作りを10年くらいやってると、技術は身に付いていってるから、ある程度どうでもいい曲もちゃんと作れちゃうんですよね。でもそういうことを想像してみると、「マジで意味ないじゃん」って思って。だから、年を取るほど「自分が本当に好きなことを大事にしよう」って強く思うようになりました。歌詞もメロディーも、まず自分が言いたいこと、聞いてほしいこと、いいなと思う動きを第一に書くことを、絶対のルールにしてます。
■放送情報
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』第2期「京都動乱」
フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて、毎週木曜24:55〜放送
Prime Videoにて、毎週金曜12:00〜先行配信
その他配信プラットフォームにて、毎週月曜12:00〜配信
キャスト:斉藤壮馬(緋村剣心役)、高橋李依(神谷薫役)、小市眞琴(明神弥彦役)、八代拓(相楽左之助役)、大西沙織(高荷恵役)、内田雄馬(四乃森蒼紫役)、日野聡(斎藤一役)、山根綺(巻町操役)、中村悠一(比古清十郎役)、古川慎(志々雄真実役)、山下大輝(瀬田宗次郎役)、戸松遥(駒形由美役)、羽多野渉(悠久山安慈役)、岡本信彦(沢下条張役)
監督:駒田由貴
シリーズ構成・脚本:倉田英之
シリーズ構成・脚本協力:黒碕薫
脚本監修:和月伸宏
キャラクターデザイン:西位輝実、渡邊和夫
プロップデザイン:小菅和久
副監督:牧野吉高
アクションディレクター:菊地勝則
美術監督:齋藤幸洋
色彩設計:篠原愛子
3DCGI:松永航、中森康晃
撮影監督:髙津純平
編集:長谷川舞
音楽:髙見優
音響監督:納谷僚介
音響効果:小山恭正
アニメーション制作:ライデンフィルム
第2期第1クールオープニングテーマ:キタニタツヤ×なとり「いらないもの」
第2期第2クールエンディングテーマ:NOMELON NOLEMON「水光接天」
©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」製作委員会
公式サイト:https://rurouni-kenshin.com
公式X(旧Twitter):@ruroken_anime
公式Instagram:@ruroken_official
公式TikTok:@ruroken_official