女性の前にあるさまざまな“壁”を見つめる 第60回金馬獎二冠『石門』2025年2月28日公開
第60回台北金馬獎で最優秀作品賞と最優秀編集賞の2冠に輝いた映画『石門』が、2025年2月28日に日本公開されることが決定した。
本作は、望まぬ妊娠に直面した若者を主人公に、女性の前にあるさまざまな壁を静かに見つめる人間ドラマ。“中華圏のアカデミー賞”と称される金馬獎をはじめ、ヴェネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門、トロント国際映画祭、ニューヨーク映画祭、BFIロンドン国際映画祭など世界の映画祭で上映されてきた。
監督を務めたのは、中国湖南省出身のホアン・ジーと東京出身の大塚竜治。中国と日本を拠点に活動する夫妻は、女性の性に関する問題をテーマに映画を共同制作してきた。『卵と石』では、湖南省の農村で出稼ぎをする両親と離れて抑圧された生活を送る14歳の少女を描き、ロッテルダム映画祭タイガー・アワードを受賞。学校で没収されたスマホを売ったことで見知らぬ男たちと知り合うことになる16歳の少女を追った『フーリッシュ・バード』では、ベルリン国際映画祭ジェネレーション14+スペシャルメンション賞を授与された。
2019年、中国湖南省の長沙市。単発の仕事で日々お金を稼ぎながら、フライトアテンダントになるための勉強をしている20歳のリン(ヤオ・ホングイ)。郊外で診療所を営んでいる両親は、死産の責任を求めて賠償金を迫られていた。ある日リンは、自分が妊娠1カ月であることを知る。子供を持つことも中絶することも望まなかったリンは、両親を助けるため賠償金の代わりにこの子供を提供することを思いつくのだが……。
ホアン・ジー監督は、『石門』について「女性を取り巻く環境に存在する、打ち破りたくてもなかなか突破して先に進めない壁」 だと言う。本作は、全編が固定位置から撮られており、撮影を担当した大塚は「人物だけを切り取るのではなく、社会の中に彼女が立っているという構図でこの物語を伝えたかった」とコメント。また、妊娠期間と同じ10カ月をかけて撮影することで、主人公が10カ月という期間の中で変化していくさまを映し出している。
主人公のリン役は、『卵と石』『フーリッシュ・バード』にも出演していたヤオ・ホングイが務めた。
あわせて日本版ポスターも公開。大きな石の扉の前に立つヒロインの後ろ姿が捉えられている。
コメント
ホアン・ジー
この映画の共同監督である大塚竜治は、私のパートナーであり、夫でもあります。ある日、彼が言いました。「10カ月間撮影しよう。」それは、妊娠から子供が生まれるまでの時間であり、この映画が生まれる時間でもあります。この映画が石の扉を開けて、日本の皆さんに届くことを嬉しく思います。
大塚竜治
10カ月の撮影を終える直前にコロナが発生し、撮影は中断を余儀なくされました。その時、私たちは主人公のリンと同じように現実の中で迷い込み、出口を見失ってしまいました。しかし、最終的にその経験がリンの抱える痛みに寄り添い、彼女と共に重い扉を開くきっかけとなり、映画に新たな光を灯すことができました。ぜひ、映画をご覧ください。
■公開情報
『石門』
2025年2月28日(金)より、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋ほか全国順次公開
監督:ホアン・ジー、大塚竜治
出演:ヤオ・ホングイ、リウ・ロン、シャオ・ズーロン、ホアン・シャオション、リウ・ガン
配給:ラビットハウス
2022/日本/中国語/148分/DCP/原題:石門/英題:Stonewalling
©YGP-FILM
公式サイト:https://stonewalling.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/usaginoie_film