『放課後カルテ』ひしひしと感じる“牧野”松下洸平の成長 少しずつ社会を学ぶ子どもたち

 そもそも私たち日本人は空気を読みすぎるところがあり、そういう風潮が「KY」というワードを生んだとも言える。言いたいことがあっても口をつぐんだり、相手の気持ちを先回りして考えようとしたりして、いつの間にかどんどん問題がこじれていくことも。6年1組の聡(渡邉斗翔)とその母・順子(市川由衣)もそうだった。

 両親が離婚し、父親が家を出ていってから部屋にこもるようになった聡。学校にもしばらく来ておらず、担任の藤岡(平岡祐太)と牧野(松下洸平)が訪ねても一向に部屋を出てくる気配がない。気づくと聡は家を出ており、偶然遭遇したれいかとバスに乗って父親が働いている場所に向かっていた。

 もともとお父さんっ子だった聡。順子はそんな息子が部屋から出てこないのは、自分の顔を見るのも話すのも嫌だからと思っていた。だが、聡が部屋にこもっているのも父親に会いに行ったのも、決して順子といるのが嫌だからではない。「喧嘩しかしないなら別れればいいだろ!」と言ってしまった直後に父親が出ていったことで、聡はずっと自分を責め続けていた。父親のもとを訪ねたのも、自分が壊してしまった家族を元通りにするため。

 そうやって話し合うことを避けてきたことで、すれ違ってしまった親子の関係を修復したのはれいかだ。父親の職場を訪ねたものの、仕事が長続きしない父親はすでに辞めており、家族は元通りになったわけではない。だけど、「しょうがなくても、寂しいものは寂しいでしょ」「おばさんも寂しかったでしょ。聡が喋ってくんなくて」とれいかが、聡と順子の両方が押し殺した感情を代弁してくれたことで二人はお互いを理解し、仲直りすることができた。

 れいかのように、あるいは友達のために言いづらいことをれいかに伝えたアローラのように、時には空気を読まず、自分の素直な気持ちや思ったことを言葉にして伝えることは大事だ。その一方で、自分が悪気なく放った言葉が誰かを傷つけてしまうことも。れいかは他人の気持ちに鈍感なところもあるけれど、今のは自分が間違ったと気づける時もちゃんとある。そうやって気づけた時には、れいかのように素直に謝れたらいい。「れいかは我慢とかしないんだろうな、ずるいなぁって思っちゃって。でも、それってれいかがずるいんじゃなくて、私が羨ましいだけじゃない?って気づいたの」と自分を客観的に見て、間違いを認められる純美の姿勢も見習いたいところだ。

 れいかと純美は自分の気持ちを伝え合って、無事に仲直りできたが、もちろん世の中にはどうしても分かり合えない人もいる。「みんな仲良くならなくてもいいけど、このままは嫌なんです」という羽菜(小西希帆)の言葉通り、必ずしも全員と仲良くする必要はない。理解し合えないと思ったら無理に相手を変えようとせず、距離を置くこともまた尊重し合うということなのだから。

 そんな社会を少しずつ学んでいく児童たちの姿に、牧野が教えられていることも多いのだろう。牧野もどちらかというと、れいかと同じで思ったことをすぐ口にしてしまうタイプ。小児科医として働いていた頃は患者に寄り添おうとせず、そのせいで問題を起こしてしまったこともあった。そこにはあくまでも患者の“体”を診るのが医者の仕事で、“心”は関係ないという考えがあったのかもしれない。だけど、児童と関わって体と心はそうやって切り離せるものではないことを知った。そんな牧野は、優秀な看護師として日々忙しく働いているがゆえに、聡と向き合う時間が十分に取れない順子に、一人で全てを抱え込む必要はなく、「学校に来れば、俺もいます」と寄り添う。その様子を近くで見ていた高崎(田辺誠一)が驚くほどに、第7話は牧野の成長をひしひしと感じる回でも合った。

■放送情報
土ドラ9『放課後カルテ』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:松下洸平、森川葵、ホラン千秋、平岡祐太、高野洸、六角慎司
原作:日生マユ『放課後カルテ』(講談社『BE・LOVE』所載)
脚本:ひかわかよ
演出:鈴木勇馬ほか
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:岩崎秀紀、秋元孝之、大護彰子
協力プロデューサー:大平太
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
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