『ライオンの隠れ家』“日常と非日常”描写の秀逸さ バラバラなピースはどう繋がる?
本作が視聴者の心を掴んで離さない理由は、作劇の妙もさることながら、メインキャスト3人の演技によるところが非常に大きい。洸人を演じる柳楽優弥は、これまではどちらかといえばエキセントリックで、他者をトラブルに巻き込んでいくようなキャラクターを演じることが多かったが、本作では巻き込まれる側の、「変化のない毎日に留まる平凡な市役所職員」という新境地の役どころに挑む。抑制の利いた演技でありながら、内側には屈折を抱えた洸人を、立体的に立ち上げている。
美路人を演じる坂東龍汰は、自閉症スペクトラムという役どころについて相当に掘り下げたのであろうと、演技から伝わる。坂東は撮影前に、発達障害のある子どもが集まる教室に出向いて交流を持ち、役柄について深く学んだのだという。美路人の存在と坂東の真に迫る芝居が、このドラマを牽引していることは間違いない。
そして、ライオンを演じる佐藤大空。子役ではなく、5歳にしてすでに「一俳優」の貫禄を見せている。第2話のラストシーンで見せた、洸人から「愁人」と呼ばれたときの表情が目に焼きついて離れない。人懐っこい笑顔ではしゃぐ幼い子どもから、「何かを背負わされた者」の虚しさと悲哀を宿した表情に一変する芝居に、思わず息をのんだ。
第2話までに、「謎」にまつわるさまざまなピースが出揃った。ネクタイの上に作業着姿、おそらく建設業に従事している愛生の夫・祥吾(向井理)。彼が出した愛生の捜索願。山梨県笛乃川で発見された、愛生の血痕がついた衣服。愛生の失踪の原因に心当たりがありそうな刑事・高田(柿澤勇人)。リニア事業関連で汚職の疑いのある議員・亀ヶ谷(岩谷健司)と、彼の動向を追う記者の楓(桜井ユキ)と天音(尾崎匠海)。そして、ライオンと洸人の行動を監視し、ライオンのキッズスマホに指令を送り続ける謎の男・X(岡山天音)ーー。第3話以降、このバラバラのピースがつながっていくことだろう。
このドラマにはさまざまな間接表現や暗喩が効果的に用いられている。プライド(群れ)で生活するライオン、海以外の違う景色が見たいウミネコ、洸人と美路人の「小森(≒子守り)」という名字、身勝手に生きてきたようで実は別のところに本音がありそうな、「愛に生きる」と書く愛生。これらのピースが今後、3人の関係性と事件の謎にどう関わっていくのかも見どころだ。
ライオンの子どもの雄は2~3歳になると親ライオンによってプライド(群れ)から追い出され、兄弟だけでプライドを作って生きるという。洸人、美路人、ライオンはどこに「居場所」を見つけていくのだろうか。
■放送情報
金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:柳楽優弥、坂東龍汰、齋藤飛鳥、佐藤大空(子役)、柿澤勇人 、入山法子、岡崎体育、尾崎匠海(INI)、平井まさあき(男性ブランコ)、森優作、桜井ユキ、岡山天音、でんでん、向井理、尾野真千子
脚本:徳尾浩司、一戸慶乃
主題歌:Vaundy「風神」(SDR/Sony Music Labels Inc.)
演出:坪井敏雄ほか
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:佐藤敦司
編成:吉藤芽衣、中野翔貴
製作:TBSスパークル
©︎TBS
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