『ボルテスV』はなぜフィリピンで愛された? 現地人監督が語る、“母系社会”ならではの熱狂

アニメ版のイメージに忠実なキャスティング

ーー実写企画が結実するまでは大変な道のりだったと思いますが、完成までの経緯を教えてもらえますか。

レイエス:自分のスキルの面、リソースの面でも、実写版『ボルテスV』を作れると証明できるパイロット版が制作できそうだと感じたのが2014年です。この頃に、フィリピンの製作会社テレサクセス・プロダクションのプロデューサーであるラリー・チャンさんに、幸運にも『ボルテスV レガシー』のプロトタイプの映像を観てもらう機会がありました。チャンさんは日本の東映に許可を取って、フィリピン最大のテレビ局GMAネットワークとの提携を通じて実現に向けて動き出したのです。しかし2019年前後に発生した新型コロナの世界的パンデミックでプロジェクトが影響を受け、この日を迎えるまでに10年を要しました。

ーーでは次にキャストについてお聞きしたいと思います。アニメの岡めぐみにあたるジェイミー役のイザベル・オルテガが、本当にアニメから抜け出してきたかのような印象の人でビックリしました。これだけアニメのイメージに寄せたキャストを集めるのは大変だったのではないですか?

レイエス:アニメをそのまま具現化したようなキャストを探すのが、このプロジェクトの一番のチャレンジでした。ゴードン役のラドソン・フローレスはオーディションを受けに来てくれた俳優で、峰一平の雰囲気にピッタリでした。しかも彼はたまたま一平と同じく特技が乗馬で、まさに神の恵みとしか言いようがなかった。イザベル・オルテガもオーディションに来た女優ですが、岡めぐみのように目がパッチリとした顔立ちでルックスからして第一印象が良かったのと、彼女のお父さんは80年代に活躍したアクション・スターで、イザベル自身も訓練を受けてアクションの心得があったんです。乗馬にしてもアクションにしても、最初から得意な人が集まったのは実に幸運でした。何もできない人たちを起用してから6カ月間トレーニングするなんて、クランクインに間に合いませんからね。アームストロング家の長男役ミゲル・タンフェリックスは、GMAが抱えている期待の注目株のタレントだったので、申し分ありませんでした。

ーービッグ・バート役のマット・ロザノは、アニメの大次郎のような大柄な外見で棒術も巧みですし、ザルドス役のマーティン・デル・ロザリオはオリジナルのプリンス・ハイネルの雰囲気に近くて素敵な俳優さんですね。

レイエス:マット・ロザノは子役の頃からよく知っていますが、この作品のキャスティングを進めている時に「減量しようかなー?」と言っていたのを私が「減量だって!? よしてくれ!」と止めました(笑)。この仕事が終わったら好きなだけダイエットしても構わないけど、ビッグ・バート役をやるなら体格はこのまま落とさないでくれよと。マットは棒術も自ら特訓してくれたので、そこもすごく助かりました。その成果は皆さんが映画でご覧になる通りです。プリンス・ザルドスは、アニメのプリンス・ハイネル同様に複雑な感情の変遷を経ていくキャラクターなので、そういった芝居を掘り下げてくれる成熟した俳優が必要だったわけですが、マーティンはそこを実に上手く演じてくれました。

「ボルテスVの歌」堀江美都子も注目している『ボルテスV レガシー』

ーー「ボルテスVの歌」のオリジナル・シンガー堀江美都子さんが、この映画に注目されていることはご存じですか?

レイエス:ああ、知っています! 堀江さんは『ボルテスV レガシー』に関してSNSで「観なければ!!」と早くから発信して下さったそうで、私たちスタッフも非常に感激しています。

ーー『超電磁マシーン ボルテスV』に関わったスタッフやキャストの中にも、すでに亡くなられた方々がいます。そういう時代にあって、日本で生まれたアニメ作品を実写映画化して、日本で公開することにどんな想いがありますか?

レイエス:なにしろすごい歴史を持つ作品ですので、実写化にあたってオリジナルへ敬意を払うために、“継承”や“伝統”を意味する「LEGACY(レガシー)」とタイトルに付けました。単なる『ボルテスV』ではなく、『ボルテスV レガシー』と題したのは、そういう原作への想いを込めているからです。我々はアニメの『ボルテスV』を世に送り出してくれた皆さんが、この作品に託した精神を継承したいと思っているんです。自分で言うのもなんですが、『超電磁マシーン ボルテスV』を原作とした映像作品で、今回のスケールを超えるものは当分出てこないんじゃないかと思っています。『ボルテスV』のような芳醇な素晴らしい作品を映画化して、再び日本の皆さんにお返しできる……お届けできるのは、ボルテスを心から愛する私にとって本当に光栄で、大変名誉なことであります。もしも叶うことなら、『超電磁マシーン ボルテスV』の制作に関わった人にお会いして、リスペクトの気持ちと、この作品を生み出してくださったことへの感謝を伝えたいです。

ーーちなみにレイエス監督が『超電磁マシーン ボルテスV』以外でお好きな日本のアニメは何ですか?

レイエス:もちろん、長浜忠夫監督の『闘将ダイモス』です!

■公開情報
『ボルテスV レガシー』
全国公開中
出演:ミゲル・タンフェリックス、ラドソン・フローレス、マット・ロザノ、ラファエル・ランディコ、イザベル・オルテガ、マーティン・デル・ロザリオ、リーゼル・ロペス、カルロ・ゴンザレス、エピ・クウィゾン、アルバート・マルティネス、ガビー・エイゲンマン、デニス・トリロ、カーラ・アベラナ
監督:マーク A. レイエス V
脚本:スゼッテ・ドクトレーロ
シニア・エグゼクティブ・プロデューサー:ヘレン・ローズ・セセ、ラーソン・チャン
エグゼクティブ・プロデューサー:ダーリング・プリドトレス、ティージェイ・デル・ロザリオ、白倉伸一郎
配給:東映
2024年/フィリピン/原題:Voltes V: Legacy
©TOEI Co. Ltd, Telesuccess All Rights Reserved
公式サイト:https://voltes-v-legacy.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/voltesv_legacy

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