伝統的な家の夫がトランスジェンダー女性と出会う パキスタン映画『ジョイランド』予告編

 10月18日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開されるパキスタン映画『ジョイランドわたしの願い』のポスタービジュアルと予告編が公開された。

 本作は、パキスタンのサーイム・サーディク監督による長編デビュー作。伝統的な価値観に縛られる若き夫婦が、そこから解放されて自分らしく自由に生きたいという願いの間で、揺れ動く姿を描く。

 カンヌ国際映画祭ではある視点部門審査員賞とクィア・パルム賞を受賞し、アカデミー賞ではパキスタン映画として初めて最終選考に残った。そのほか2023年インディペンデント・スピリット賞外国映画賞など18賞受賞、19賞にノミネートされている。

 また、本国で少数の保守系団体から「LGBTQ+や、彼らとの恋愛を美化して描いた」と反発を受けた本作は、公開1週間前に政府から上映禁止命令を受けてしまう。しかし監督や出演者らの抗議活動に加え、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイやパキスタン系イギリス人の俳優リズ・アーメッドらから支援の声が上がり、禁止令が撤回されたことでも注目された。

 パキスタンで2番目の大都市、古都ラホール。保守的な中流家庭ラナ家の次男ハイダルは、現在失業中だ。家父長制の伝統を重んじる厳格な父からの「早く仕事を見つけて男児をもうけなさい」というプレッシャーを受けていた。妻のムムターズはメイクアップアーティストの仕事にやりがいを感じ、家計を支えていた。ハイダルは、就職先として紹介されたダンスシアターでトランスジェンダー女性ビバと出会い、パワフルな生き方に惹かれていく。その恋心が、夫婦とラナ家の穏やかに見えた日常に波紋を広げていく。

 公開されたポスタービジュアルには、夫ハイダルとトランスジェンダー女性のビバがスクーター二人乗りでラホールの街を駆け抜けるシーンと、ハイダルの妻ムムターズと義姉が異国情緒あふれるラホールの家の屋上で大家族の洗濯物を干すシーンが捉えられている。そして「大都市ラホールの街角で、それぞれの幸福がすれ違う」とのコピーが添えられている。

映画『ジョイランド わたしの願い』予告編

 あわせて公開された予告編は、エグゼクティブ・プロデューサーも務めたユスフザイの「世界中の共感を呼んでいる本作をサポートできることを誇りに思います」というコメントから始まる。「貧しいなりに尊厳は守ってきた」というラナ家の家長が、失業中である息子ハイダルに「子供はできないのか?」と男孫を催促するシーンから、仕事に誇りを持っている妻ムムターズが映し出される。ある日ハイダルは友人にダンサーの仕事を紹介される。「センスがない」と劇場支配人にはバカにされるが、そこで出会ったトランスジェンダー女性ビバの美しさと自由な生き方に惹かれていく。彼女によってバックダンサーに抜擢されたハイダルは、家長から何の仕事に就いたのかと聞かれ、後ろめたさからとっさに「劇場支配人として雇われた」とウソをついてしまうのだった。しかし家長は、ハイダルが職を得たことからムムターズに家庭に入ることを命じるのだった。

■公開情報
『ジョイランド わたしの願い』
10月18日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:サーイム・サーディク
出演:アリ・ジュネージョー、ラスティ・ファルーク、アリーナ・ハーンほか
製作総指揮:マララ・ユスフザイ、リズ・アーメッドほか
配給:セテラ・インターナショナル
2022年/パキスタン/パンジャーブ語、ウルドゥー語/1.33:1/5.1ch/127分/英題:Joyland/日本語字幕:藤井美佳
©2022 Joyland LLC
公式サイト:https://www.joyland-jp.com

関連記事