宇野維正の映画興行分析

『ヒロアカ』初登場1位も勢いはなし 海外アニメ映画シリーズ2本が牽引する夏休み後半

 8月1日(木)に『インサイド・ヘッド2』、翌2日(金)に『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』と、米日のいずれも人気アニメーションシリーズの新作が公開された8月第1週の動員ランキング。週末3日間の成績では『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』が動員60万8500人、興収8億9500万円をあげて1位を奪取。同期間の『インサイド・ヘッド2』の動員は39万8800人、興収は5億3600万円。初日からの4日間の動員57万2800人、興収7億3700万円と比べてみても、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』の優位は揺るがない。

 と思いきや、ウィークデイに入ってからは意外にも『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』は伸び悩んでいて、デイリー成績では『インサイド・ヘッド2』に差をつけられ、週末動員では3位だった公開3週目の『怪盗グルーのミニオン超変身』との2位争いに甘んじている。東宝配給、『少年ジャンプ』連載コミック原作のアニメーション作品、夏休み興行と近年の「大化け」する条件が揃ってはいたものの、今回ばかりは2021年8月公開の前作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の最終興収34億3000万円から倍増、みたいな現象には程遠い状況。原作ファンのシビアな視線によるジャッジということなのだろう。

 『インサイド・ヘッド2』と『怪盗グルーのミニオン超変身』、海外アニメ映画のシリーズ作品2作が夏休み興行の後半を牽引する一方で、先週まで上位を賑わせていた『キングダム 大将軍の帰還』、『デッドプール&ウルヴァリン』は予測通り「初動型」であることが明らかに。しかし、初登場でそれよりも下位の8位となったのが、シリーズ作品ではないという意味でこの夏ほとんど唯一の「普通のハリウッド映画大作」、リー・アイザック・チョン監督の『ツイスターズ』だ。8月1日(木)公開となった同作の4日間の動員は10万7800人、興収は1億6100万円。そこまで悪い成績には見えないかもしれないが、夏休みの中のシネコンのスクリーン争奪戦において、この数字はあまりにも弱い。IMAX、4DXなどのラージフォーマット上映映えする作品でもあるが、上映の時間帯や上映回数において早くも冷遇されてしまっている。

 この夏は海外のアニメーション映画がそれなりに頑張っているので、これをもって「外国映画の危機」とするのは正確ではないが、実写の外国映画に関しては間違いなく危機に瀕している状況。そんな矢先、9月20日に公開される予定だったジョン・ワッツ監督、ジョージ・クルーニー&ブラッド・ピット主演の『ウルフズ』の日本公開中止のニュースが飛び込んできた。

■公開情報
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』
全国公開中
原作・総監修・キャラクター原案:堀越耕平(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:岡村天斎
脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
音楽:林ゆうき
アニメーションアドバイザー:長崎健司
アニメーション制作:ボンズ
声の出演:山下大輝(緑谷出久役)、岡本信彦(爆豪勝己役)、佐倉綾音(麗日お茶子役)、梶裕貴(轟焦凍役)、石川界人(飯田天哉役)、宮野真守(ジュリオ・ガンディーニ役)、生見愛瑠(アンナ・シェルビーノ役)、三宅健太 (オールマイト/ダークマイト役)ほか
製作委員会:東宝、讀賣テレビ、集英社、ボンズ、日本テレビ、電通、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ムービック
配給:東宝
©2024「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 © 堀越耕平/集英社
公式サイト:https://heroaca-movie.com/
公式X(旧Twitter):@heroaca_movie

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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