パニック映画『ツイスターズ』は真夏のデート映画に最適! “ちゃんと怖い”竜巻描写も

 回れ回れツイスター、もう決して止まらないように……♪ というわけで『ツイスターズ』(2024年)である。まさかの『ツイスター』(1996年)の続編だが、前作を観ておく必要は皆無である。単体の竜巻パニック映画として完成されており、正直「竜巻でエラいことになる」くらいしか共通点はない。というか、多くの方はそもそも「なぜに今になって『ツイスター』の続編を?」という疑問はあるだろう。たしかに前作は牛が飛んでビックリしたが、あれはCGが物珍しかった90年代だったからだ。この令和の時代、牛が飛んでも何もビックリはしない。そんな中でどうやって面白く作るのだろう? そう勝手に心配していたのだが、これが前作と並ぶ……いや、何なら前作を超えるパニック映画の、そして月9的な恋愛映画の良作に仕上がっていた。結論から言えば、普段はパニック映画を敬遠するお客様、あるいは適当なデートムービーを探している方に、本作をオススメしたい。思わず久保田利伸が聴こえてくるほどに、本作は真っ当な恋愛映画なのである。

 お話はこんな感じだ。いかにも死にそうなノリの大学生たちが、研究のために竜巻に接近する。案の定、大学生たちは一人、また一人と竜巻に持っていかれた。主人公のケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)は彼氏と共に高架下に避難するが、突然の風に吹かれて彼氏までも空の藻屑に。この悲劇以来、ケイトは竜巻を追うことをやめる。そして花の都・ニューヨークに出て、平凡な生活を送っていた。そこに学生時代の生き残りがやってきて、技術革新のためにとケイトを再び竜巻ハンターとして現場へ連れ出す。過去のトラウマを乗りこえるべく現場に入ったケイトだったが、そこには絵に描いたようなアメリカンな竜巻系YouTuberたちがいた。ケイトは、そのリーダーで「竜巻カウボーイ」を名乗るタイラー(グレン・パウエル)と知り合う。軽薄で無鉄砲なタイラーを軽蔑するケイトだったが、徐々に彼がただの能天気なバカではないと気づく。一方のタイラーもまた、ケイトを都会から来た頭でっかちな研究者ではないと悟るのだった。やがて2人のあいだには互いの技量を認め合うライバル関係が構築されていくが……そんな皆様のところに、超巨大竜巻が迫ってくるのだった。

 ここまでお話を書いてみると分かりやすいが、物語の主軸は、悲劇で心が折れてしまった主人公ケイトの再起の物語であり、同時にケイトとタイラーのアメリカンな恋物語である。一応、劇中で2人のあいだに直接的な恋愛シーン(キスなど)はないが、この2人の関係性を恋と呼ばずして何と呼ぼうか。合間合間でちょっと人が空のゴミになるけれど、正反対の2人が「竜巻」という共通の専門領域を通じて、徐々に惹かれ合っていく姿は超王道の恋愛映画である。おまけに近ごろではコント以外では見なくなった、天然モノの「お前、あの子といたいんだろう!? だったら追いかけろよ!」まで観れる(ちゃんと空港でやる)。エンドロールは普通にイイ感じの現地の曲が流れるが、今のアラサー/アラフォー的には久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」の脳内再生、待ったなしである。

 このように直球かつ丁寧な恋愛映画要素で、いい意味で不意打ちを食らった気分になるだろう。しかし、肝心の竜巻による大破壊ももちろん抜かりはない。竜巻映画といえば『イントゥ・ザ・ストーム』(2014年)という傑作があったが、こちらもあの手この手で竜巻を見せてくれる。ROUND 1くらいにエンタメとして楽しめる竜巻から、町がなくなる大災害竜巻まで、さすが竜巻映画の本家本元だ。そして先に書いた丁寧な人間ドラマのおかげで、物語が進むにつれて素直に「誰も死なないでくれ!」の不殺の思いが高まりに高まったクライマックス、期待通りに最強最悪の巨大竜巻が襲ってくるわけだが……。ここで、この映画のもう一つの特徴を書いておきたい。それは竜巻がちゃんと怖いことだ。

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