『ゲゲゲの鬼太郎』第2期が“特別”である理由 シリーズ屈指の恐怖度と社会風刺が魅力に

 水木しげるの生誕100周年記念作品として2023年秋に公開された東映映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、公開から11週連続で観客動員トップ10入りを果たし、SNSを中心に口コミでも盛り上がりながら興行収入約27億円の大ヒットとなった。令和になってなお『鬼太郎』強し!の印象を受ける。タイトル通り、あの有名な鬼太郎の誕生秘話を描き、水木しげる作品の持つ怪奇性やグロテスクさを、テレビの放送コードを意識しないで制作された点も評価された。

 水木の代表作『ゲゲゲの鬼太郎』は、貸本漫画家時代 の怪奇漫画『墓場鬼太郎』から幾度かの改題、内容の練り直しを経て、1965年に『少年マガジン』で連載が始まった。数年後の1968年には東映動画(現・東映アニメーション)でモノクロアニメとして映像化され、それ以降は約10年間隔でスタッフ、キャストを入れ替えつつ何度もアニメ化されている。この中でも特に恐怖度が高く、社会風刺や愚かな人間への視点などが盛り込まれて評価の高いテレビアニメ第2シリーズ『ゲゲゲの鬼太郎』(第2期)が、東映チャンネルで放送されることとなった。

 第2期はモノクロ放送だった第1期の続編的な位置づけで、メインキャストがそのまま続投している。1年以上に及ぶ放送で原作漫画の多くをアニメ化した第1期を受けて1971年にスタートした第2期は、『少年マガジン』連載版のストック不足を補う手法が採られた。水木が『鬼太郎』以前に発表していた読み切りの怪奇漫画を脚色し、鬼太郎を絡ませたオリジナル作品が多く含まれている。いや、正確には多く……というより、全45話の半分強が非・鬼太郎作品を原作としたものだ。青年誌に発表された作品を採り入れたために、数多く制作された『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメの中で、水木しげるの怪奇エッセンスがもっとも濃く楽しめる唯一無二のシリーズでもある。

 第1話「妖怪復活」は、猫娘が「今の鬼太郎さんは、生きているけど死んだようなもの」と言うように、かつての面影もないほど鬼太郎は変わった暮らしをしており、海辺の漁村で目玉親父と魚を干したり俳句などをたしなんでいる。悪い妖怪を鬼太郎が退治する勧善懲悪ものの作りで、全65話の放送を重ねた第1期の終了から2年ぶりに姿を見せる鬼太郎は、殺伐とした日々が嫌になったのか平凡な人間のような生活を送っている。それを目の当たりにして激怒するねずみ男の「馬鹿馬鹿しい!干物を作ったり俳句作ったりして世の中が良くなると思ってるのかよぉ!」の台詞が笑える。確かに干物を干していれば妖怪の悪事が消えるわけではないので正論だ。第2期はねずみ男を演じるベテラン大塚周夫の、アドリブなのか台本通りなのか全く分からないほど乗りに乗りまくった台詞回しが楽しく、鬼太郎や目玉親父、猫娘とのボケツッコミの応酬も見どころ。

 放送第1話「妖怪復活」 は、『別冊少年マガジン』掲載の「泥田坊」が原作。第2話は『少年マガジン』連載時に全5回を費やした「妖怪反物」、第3話は全3回の連載になっていた「妖怪大裁判」が原作と、発表時に事件解決まで数週間を要したエピソードを1話完結で制作している。この後、第4話「雨ふり天狗」、第5話「あしまがり」(原作のサブタイトルは「妖怪あしまがり」)と、『少年マガジン』の原作付きエピソードが続くが、第6話「死人つき」から3話連続で非・鬼太郎作品を脚色したオリジナル。これ以後は1週おきに原作付きとオリジナルが交互に放送されるが、正直どちらも面白い。

関連記事