『ガルクラ』『数分間のエールを』は日本アニメの“到達点”に 3DCGで追求した手描きの良さ

 「日本はアニメの国」だと世界的なイメージとなっているが、その歴史も特徴も、世界のアニメーションの本流に位置していたというよりは、独自の表現スタイルを突き詰めることで支持を拡げてきた。

 例えば、世界的にアニメーション制作は現在、3DCGを用いることが一般的だが、日本は手描きの作画が主流である。

 そんな日本でも3DCGアニメーションは制作されている。だが、手描きアニメの国ゆえに、常に「手描きの作画と比べてどうなのか」という視点で議論される宿命にある。その議論ゆえなのか、日本の3DCGアニメはかなり特異な方向へと発展している。「手描きアニメのエッセンスをいかに取り入れるのか」という課題に挑み続け、本来なら1秒24フレームで全身を動かすフルアニメーション表現も可能なところ、敢えてリミテッドな表現の魅力を追求し、立体的な造形物であることを強調するよりも、2Dっぽいルックに見せる努力をしてみたりなど、日本アニメらしい表現を模索し続けている。

 その日本のCGアニメを考える上で、このところ興味深い作品が続けて放送・公開された。東映アニメーションの『ガールズバンドクライ』(以下、『ガルクラ』)と劇場アニメ『数分間のエールを』である。

 この2作は、従来の日本の手描きアニメらしさを追求するとともに、3DCGの利点でどう手描きアニメとの違いを生むかを両立させようという意欲を持った作品だ。

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手描きとCGの根本的な違い

 そもそも、アニメにおいて手描きとCGの根本的な違いは何か。

 手描きとCG制作工程で大きく異なるのは、主にキャラクター描写だ。CGの場合、まずはモデリングと呼ばれる作業でキャラクターのモデルを作る必要がある。これは専任のモデラ―と呼ばれる職種の人間が担当する。一体のモデルを作るのにかなり時間を要するので、数シーンしか出てこないモブキャラのモデルは作らずに手描きというアニメも多い(『ガルクラ』もこれを採用している)。そのモデルを動かすのはCGアニメーターの役目だ。手描きの場合、キャラを描くのも動かすのも同じアニメーターだが、CGの場合はその2つは異なる工程になる。一度作ったモデルは崩れることはないので、アニメーターによって絵柄が異なるというようなバラつきは起こらない代わりに、アニメーターごとに絵柄の個性も生まれない。

 そして、アニメーションとしての動かし方に関しては、手描きアニメで1秒24フレームで動かそうと思うと24枚の絵を描かねばならないため大変な作業であり、基本的には1秒8フレームや12フレームとなるが、CGの場合は基本的に1秒24フレームで出力できる。ここから生じる違いが、日本のアニメにおいて「手描きかCGか」の議論を生んでいる。

 フルアニメーションの対義語はリミテッドアニメーションだが、リミテッドな動きは単なる省略ではない。省略と同時に重要な部分だけを動かすことで強調できるということでもあり、リアルとは異なるユニークさを生み出し、その魅力を追求してきたのが日本のアニメの歴史だ。

 現在放送中のポリゴン・ピクチュアズ制作の『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャニアニ』)はそんな手描きアニメの魅力をCGで表現しようとしている作品だ。スカートや髪の毛のなびきなどは、CGのシミュレーション技術も駆使しつつ作っていると思われるが、キャラクター全体は動かしすぎずに必要な部分だけを動かし、必要に応じてコマを落として手描きの感覚を作っている。

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 普通に出力すれば、24フレームの滑らかな(滑らかすぎて違和感のある)動きになりがちなところを、日本アニメらしさを追求してフレーム数を調整し動きを作るのは、非常に高度なセンスと技術を要する。こうした流れは2013年の『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』や2014年『楽園追放』と『シドニアの騎士』あたりからアニメファンの間で注目されだし、『宝石の国』や『BanG Dream!』シリーズなどを経て、現在も進化し続けている。

 現在は多くの手描きアニメの作品で、歌唱シーンなどピンポイントでCGを用いる作品は多く、そのためには手描きとCGが一つの画面で違和感なく馴染む必要がある。そのように手描きと共存してきた、日本ならではのCGアニメのあり方と言える。

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