『光る君へ』金田哲はカッコよさの中に“悲哀”を込める “死に様俳優”としての美しさ

 続いて『ヘルドッグス』だ。この作品で金田が演じるのは、武闘派暴力団・東鞘会の若頭・三神である。「金田哲がヤクザ役」と聞いて大方の人がイメージする通り、インテリヤクザである。映画では詳しく言及されないが、深町秋生の原作では、ヤクザなのにケンカが弱いことにコンプレックスを抱いている。そのくせ、言うことは威勢がいい。

「たとえ会長が許しても俺は許さねぇからな、このクソボケが。お前のケツの穴まで掘り返して、精進落としの余り物詰め込んでやらぁ」

 これは、岡田准一演じる兼高の失態へのタンカである。ヤクザらしくない独特の高音(もしかしたら、これもコンプレックスかもしれない)によるまくし立てが、小気味よい。

<60秒予告>映画『ヘルドッグス』9月16日(金)全国公開

 最期は兼高の弟分である室岡(坂口健太郎)に、仲間割れの末、殺される。その際の、彼のセリフがあまりにも悲しい。

「兼高が入って来るまで、俺たちうまくやってたじゃねーかよ!」

 元々室岡は、三神の弟分だった。しかし兼高が(実は潜入捜査官として)東鞘会入りしてからは、室岡は兼高の弟分となる。そして、兼高と対立している三神と距離を置くようになる。三神が兼高を目の敵にするのは、かわいい弟分を横取りされた恨みもあるのではないか。

 原田監督作には、ブロマンス要素の強い作品が多い。この作品も、兼高と室岡、あるいは兼高と会長・十朱(MIYAVI)とのブロマンスが強調されている。だが実は、三神と室岡のブロマンスにも注目してほしい。「ブロマンスのやきもち」、あるいは「ブロマンス三角関係(十朱を入れたら四角関係)」と、ブロマンスがこじれるといかにややこしいかがわかる。

 かつての弟分から濃厚な“死の接吻”を受け、らせん階段から突き落とされる。木の葉のように落ちていくさまも、なぜか美しい。

 意外に思われるかもしれないが、金田哲はこのように「死に様俳優」なのである。悲しくも美しく死んでいく俳優は、ハードボイルドには不可欠だ。筆者は、これからも金田哲の死に様を追いかけたく思う。

 ただ、今演じている藤原斉信は、史実通りならまあまあ長生きした末に畳の上で死ぬ。誰にも殺されない。大変喜ばしいことだが、残念極まりない。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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