『花咲舞』の半沢直樹・劇団ひとりはなぜイメージと違う? 日曜劇場・堺雅人と比較

 ここで整理しておきたいのが時系列。堺版の半沢が所属していたのは東京中央銀行で、劇団ひとり版の半沢が所属しているのは産業中央銀行である。東京中央銀行は産業中央銀行と現在、舞が務める東京第一銀行が合併してできた銀行。堺版の半沢のプロフィールを確認すると、半沢は1970年生まれであることから、新人行員となったのは1992年頃。堺版の半沢は2013年に東京中央銀行の大阪西支店にいるので、産業中央銀行の経営企画部にいる劇団ひとり版の半沢の姿は、ドラマになっていない約20年間のどこかということになる。

 だからといって正義感が強く、2013年には融資課の課長にまでなっている半沢が、過去、汚いやり方をしていたということにはならない。人の印象というのは、見る立場によって大きく変わるものだからだ。舞や昇仙峡から見れば、現在の半沢はライバル銀行の社員。眠山のように、田舎で銀行が2つしかないようなところでは町おこしのために両者が協力できれば一番いいのだろうが、億単位の金が平気で動く銀行にとっては、自行の利益も優先すべきもの。頭取同士の会談で、自行のデータを耳打ちする“影武者”のような役割を担っている半沢は、ビジネスマンとしてはかなり有能なはずだ。目の前に転がっている大口の契約を逃すはずがない。

 そのような視点からみれば、ビジネスを最優先した半沢が、劇団ひとりが演じたようにあくどく見えるのも間違いではないと思われる。堺版の半沢も妻の花(上戸彩)の前では、ヘラヘラしていることがあったし、「倍返し」を実現させるために相手の裏の裏をかき、目的のためには手段を選ばない危うい一面を見せていた。そう思うと堺も劇団ひとりも「半沢直樹」というキャラクターを忠実に再現しているといえる。

■放送情報
土ドラ9『花咲舞が黙ってない』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
TVer、Huluにて、地上波放送後配信
出演:今田美桜、山本耕史、飯尾和樹(ずん)、要潤、菊地凛子、上川隆也ほか
原作:池井戸潤 『花咲舞が黙ってない』(中公文庫/講談社文庫)、『不祥事』(講談社文庫/実業之日本社文庫)
脚本:松田裕子、ひかわかよ
演出:南雲聖一
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:小田玲奈、鈴木香織、能勢荘志
シリーズプロデューサー:加藤正俊
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
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