ゲームと映画の表現は近づいている? メディアを超えた“世界の構築”が新たなトレンドに

ゲームと映像にまたがって世界観を構築する時代の到来?

『サイバーパンク:エッジランナーズ』Netflixにて独占配信中

 映像作品とゲームの見せ方が似てきているなら、両者をまたいで一つの世界観を作り上げることも可能ではないか。MCUは複数の作品にまたがって統一した世界観を示し、その広大な世界で物語をひとつずつ切り出し、連結させていくことで「ユニバース」を構築した。この手法をゲームと映像にまたがって展開するとどうなるのか。

 先に紹介した『サイバーパンク エッジランナーズ』は、ゲーム本編には名前だけが登場するキャラクター、デイビッド・マルティネスを主人公にしている。つまり、ゲームの世界にある、本編とは別の物語を描いた。これによってゲームユーザーにとっても新鮮かつ、世界観をより深く味わうことができた。

『THE LAST OF US』©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

 『THE LAST OF US』は概ねゲーム本編の物語を忠実になぞったが、時折脇役にスポットをあてたエピソードを挟むことで、ゲーム世界を深化させることに成功している。そうした世界観の共有化と掘り下げは、今後さらに丁寧になっていくのではないか。とりわけ、オープンワールド形式のゲームは、プレイヤーの数だけ物語があると言えるし、映像作品は、そんな数多ある物語の一つのように感じられるだろう。オープンワールドのプレイ動画を動画配信サイトにアップしている人は多いが、プロによる映像作品は、洗練されたプレイ動画のようなものと言えるかもしれない。

 MCUのように広大な世界を構築し、ひとつの作品だけで完結させない物語のあり方を、批評家の渡邉大輔氏は「ワールドビルディング」と呼ばれると紹介している(※5)。ゲームと映像のカップリングはこれをさらに発展させたものと言える。世界の構築(ワールドビルディング)が、映像作品だけでなされるのではなく、ゲームと映像にまたがってなされるのだ。

 ゲームユーザーは自らのプレイで世界の一員となる。そして、その世界にはさらにもっと色んな物語があることを、映像作品を通じて知る。それによって、ゲーム体験はさらに没入感とリアリティを増し、体験の質が向上していく。ゲームのインタラクティブ性と映像作品の物語性がこのような好循環を産む可能性がある。

 それが本当に実現できるのであれば、ゲームの映像化は単なるメディアミックスに終わることなく、新たな形式の表現となるかもしれない。映像とゲームを等価に展開し、一つの世界を紡ぎ高度な物語と没入感を提供する、それはビジュアルメディアの未来を形成することになるのでは、と筆者は思う。

参照

※1. https://automaton-media.com/articles/newsjp/20230502-246098/
※2. https://collider.com/avatar-2-the-way-of-water-box-office-budget/
※3. https://www.gamespark.jp/article/2023/01/23/126383.html
※4. https://www.theverge.com/2023/2/13/23597863/hbo-the-last-of-us-tv-show-game-part-i-sales-npd-group
※5. https://realsound.jp/tech/2018/03/post-164358.html

■公開情報
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
Prime Videoにて見放題配信中
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、キーガン=マイケル・キー、セス・ローゲン、フレッド・アーミセン、ケヴィン・マイケル・リチャードソン、セバスティアン・マニスカルコ
脚本: マシュー・フォーゲル
監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック
製作:クリス・メレダンドリ(イルミネーション)、 宮本茂(任天堂)
日本語版吹替声優:宮野真守(マリオ)、志田有彩(ピーチ姫)、畠中祐(ルイージ)、三宅健太(クッパ)、関智一(キノピオ)
配給:東宝東和
©︎2023 Nintendo and Universal Studios

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