川栄李奈がエンタメ界を席巻 『となりのナースエイド』『変な家』における演技の変化

 それ以前にも、初主演映画『恋のしずく』(2018年)や大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合)、声優を務めた『きみと、波にのれたら』(2019年)などの“代表作”と呼べるものは多々あったが、やはり『カムカムエヴリバディ』がその最たるものであり、あそこから川栄の真の活躍がはじまったのではないかと思う。いまでは脇から作品を支えるポジションだけではなく、先頭に立って牽引する役割を担うことも多い。そのひとつが、封切られたばかりの『変な家』である。

 同作はミステリー要素の強いホラー作品であるため物語の詳細に関する記述は控えるが、ざっくりとしたあらすじとしては、とある“間取りのおかしな家”の秘密に迫っていくというもの。物語のカギを握る柚希という女性を川栄が演じ、私たちは彼女に導かれるようにして、恐怖の世界へと足を進めていくことになる。

 本作での川栄の演技の素晴らしさは、序盤は謎めいた存在に徹して私たちを翻弄し、中盤以降は物語をドライブさせていくところにある。つまりは作品内における曖昧な存在から、主体性を持った存在へと柚希は変わっていくのだ。抽象度の高い演技からリアリスティックな演技への移行の滑らかさには、鑑賞後に唸らずにはいられない。思い返してみてようやく、川栄の演技の変化の滑らかさに気がつくのだ。ダブル主演を務める間宮祥太朗と佐藤二郎のコンビによる力ももちろん大きいが、本作が観客の内面に生じさせる心の動きには、川栄の力こそが影響していると思う。物語のカギを柚希が握り、作品のカギ(=要)を川栄が握っている。

 これらの流れを経て、川栄は『千と千尋の神隠しSpirited Away』の舞台に立つことになる。同作の幕はすでに上がっているが、上白石萌音、橋本環奈、福地桃子、そして川栄李奈の4人がそれぞれに主演を務めるため、川栄の出番は3月27日からとなっている。これまでの彼女の経験のすべてが、この舞台上で活きるはずである。

■公開情報
『変な家』
全国公開中
出演:間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈、長田成哉、DJ 松永(Creepy Nuts)、瀧本美織、根岸季衣、髙嶋政伸、斉藤由貴、石坂浩二
原作:雨穴『変な家』(飛鳥新社)
監督:石川淳一
脚本:丑尾健太郎
制作プロダクション:TOHOスタジオ、共同テレビジョン
配給:東宝
©︎2024「変な家」製作委員会
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