『ブギウギ』趣里を見つめていた中越典子の表情が頭から離れない キヌ役の難しさを考察

 『こころ』で主演を務めて以降は、ドラマをはじめ、映画に舞台にと数々の作品に出演し、中越は俳優としてのキャリアを築き上げてきた。現在のエンターテインメント界における彼女の立ち位置は、バイプレイヤーと呼べるものだろう。『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系)や『必殺仕事人』(テレビ朝日系)、『特捜9』(テレビ朝日系)などのシリーズものを長きにわたって支えてきた。映画では、魚喃キリコによるマンガ作品を矢崎仁司監督が実写化した『ストロベリーショートケイクス』(2006年)などの出演で知られ、映画ファンからの支持も厚いというのが私の認識だ。

『ブギウギ』中越典子の眼差しに滲む苦労と懺悔 20年ぶりの朝ドラは粋な巡り合わせに

ヒロイン・スズ子(趣里)の出生の秘密が明かされた朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)。スズ子の実の両親は香川の地主で有力者・治郎丸家…

 現在は『ブギウギ』とは毛色の異なるドラマ『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)にも出演しており、対照的なパフォーマンスを展開中だ。しかし、エンターテイナーとして第一線に立ち続けているとはいえ、ここ数年は映画への出演が少ない。どのような事情があるのか分からないが、彼女を主演に据えた映画作品をどんどん制作すべきである。

 つい勢いづいてそんな大きなことを言ってしまうのは、やはり『ブギウギ』での中越が素晴らしいからだ。すでに記しているように、彼女の出番はとても限られたものだった。中越のポジションの取り方が異なれば、それは作品そのものの印象にまで大きく影響したことだろう。物語の序盤から登場しているツヤ役の水川や、スズ子を演じる趣里たちのつくった世界観に、彼女はアジャストしていかなければならない。結果として、すでに完成していた世界観(=母娘の関係性)に関与しながら、じつは自身が何者であるかを真っ直ぐに示した。それはキヌという人物の“これまで”が感じられる悲壮感あふれるものだったが、決してスズ子の後ろ髪を引っ張るようなものではなかった。

 その後スズ子がどうなったかを私たちは知っているが、国民的スターとしてあれほど人気なのだから、キヌだって知っているのだろう。再会の機会があるならば、そこでキヌはどんな言葉を発するのか。演じる中越典子は現在のキヌをどう体現するのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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