『ブギウギ』趣里が体現した新たな家族の形 “人に頼ってもいい”という呪縛からの解放
愛助(水上恒司)の分まで母親である自分が愛子を育てていくと決めたスズ子の気持ちも分かるが、「大丈夫でない」とスズ子の肩に手を置く山下の言うことにも納得する。コロンコロンレコードでの打ち合わせは山下に任せ、スズ子は家に全速力で直帰。この時も脳裏に浮かぶのは愛子の姿。慌てて玄関のドアを開けると、居間では愛子が大野と一緒に洗濯物を畳んでいた。
おそらく、この間は朝から午後イチまでの大体6時間ほど。心配するスズ子に、大野は「愛ちゃんはお利口さんでしたよ」と告げる。「愛ちゃん」呼びもそうだが、すっかり大野に懐いている様子の愛子。張り替えられた障子は、愛子も手伝ったのだと大野は教える。障子の上に貼られた花型の障子。「それ、愛ちゃんが貼ったの」と嬉しそうに伝える愛子に、「女の子だもの、お花の障子は破きませんよ、きっと」と大野。障子に触れ、スズ子はポロポロと涙をこぼしていた。
スズ子が信用できていなかったのは愛子の方だったのかもしれない。それは愛するがあまりに。「ずっと一人で頑張ってきたはんでね。これがらはわだすがいます。頼ってけ」と手を握る大野に、スズ子は「おおきに」と感謝を告げた。にっこりスズ子に抱きつく愛子とスズ子の背中をなでる大野。一人で全てを抱えるのではなく、時には人に頼ってもいい。ようやく呪縛の解けたスズ子にとっての、これもまた新たな家族の形のように思える。
『ブギウギ』は週の終わりにスズ子が新曲をステージで披露するというのが、一つのフォーマットになりつつあったが、今週は「ヘイヘイブギー」を愛子に子守歌として聞かせるにとどまった。それは映画での劇中曲「恋はいつも回り道よ」の歌唱もあってのことのように思えるが、羽鳥善一(草彅剛)が提供した恋の歌「ヘイヘイブギー」を、スズ子は愛子と自分の親子の歌として捉えているということがきちんと生かされる演出であり、「あなたが笑えば私も笑う」という歌詞が第21週全体を包み込んでいる。「ヘイヘイブギー」が、“ブギの女王”としてスズ子の歌手人生を締めくくる曲となるのは、また後の話だ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie