“犬映画”はなぜ人気? 『ペット』『クイール』『僕のワンダフル・ライフ』などから探る

犬と人間のコンビが作り出すコメディ

 人間と犬の絆を描く物語は、なにも涙を禁じえない感動作ばかりではない。1989年の『ターナー&フーチ/すてきな相棒』では、刑事のスコット・ターナー(トム・ハンクス)が殺人事件の目撃者として、しつけの悪い犬フーチを引き取ることになり、悪戦苦闘しながらともに事件を追うストーリーだ。「超」がつくほどの潔癖症のターナーに対し、フーチはよだれを垂れ流しながら走り回り、彼の家や捜査やロマンスをことごとく台無しにしていく。しかし次第に1人と1匹はかけがえのない相棒になり、ともに事件解決を目指す。彼らが良好な関係を築くまでには、どちらかといえばターナーが考えを変える必要があった。フーチのほうはいつでも彼の相棒となる準備ができていたのだ。人間と犬がバディを組むためには、いつも人間のほうに覚悟や準備が必要になる。

『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』©2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

 強い絆といえば、『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』(2021年)も少女と赤い巨大な犬の絆の物語だ。アメリカの児童文学作家ノーマン・ブリッドウェルの名作絵本『クリフォード おおきな おおきな あかい いぬ』を実写映画化した本作。

 少女エミリー(ダービー・キャンプ)は不思議な男の店で赤い子犬を貰い受ける。多くの映画で、不思議な生き物というのは、正体不明の謎の人物の店で手に入れられるものだ。学校でいじめられているエミリーは、ある晩「大きく強くなれたらいいのに」と願う。翌朝目が覚めると、クリフォードが巨大化していた。困り果てたエミリーは例の店の主人を探そうとするが見当たらない。そんななかクリフォードは遺伝学会社の社長に目をつけられてしまう。実験体にされそうになるクリフォードを救うため、エミリーと叔父のケイシー(ジャック・ホワイトホール)や同級生のオーウェン(アイザック・ワン)は、変わり者の隣人たちと力を合わせて困難に立ち向かう。

 クリフォードは、成犬ではなく子犬の姿のまま巨大化し、そのかわいらしさがなんとも言えない。また本作のクリフォードはここで紹介したほかの作品に登場する犬たちと違い、フルCGで作られている点にも注目だ。リアルに寄せすぎないながらも、現実味のある表情と動きに感心するだろう。近年では、CGの技術も進み、こうしたリアルなCG犬や部分的にCGを用いた犬が活躍する映画も多い。

 古くから人間のパートナーとして暮らすようになった犬との関係は、家族や友人との関係と同じように人々の心を揺さぶる。言葉が通じなくても、ときに通じないからこそ、ペットと人間の関係は特別なものに感じられるだろう。犬と人間は、ともに豊かな人生を送るための相棒として、寄り添うのかもしれない。

■放送情報
『ペット』
日本テレビ系にて、2月16日(金)21:00~22:54放送
※本編ノーカット
監督:クリス・ルノー、ヤーロウ・チェイニー
製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー
脚本:ブライアン・リンチ、シンコ・ポール&ケン・ダウリオ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
声の出演:設楽統(ルイス・C・K)、日村勇紀(エリック・ストーンストリート)、佐藤栞里(エリー・ケンパー)、永作博美(レイク・ベル)、宮野真守(アルバート・ブルックス)、梶裕貴(クリス・ルノー)、沢城みゆき(ジェニー・スレイト)、中尾隆聖(ケヴィン・ハート)、銀河万丈(ダナ・カーヴィ)、山寺宏一(スティーヴ・クーガン)※()内は英語版
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