『ブギウギ』戦後描写のわずかな違和感 “歌”の表現が素晴らしいからこそ気になるポイント

 もうちょっと描いてほしい、食い足りなく感じるのは、羽鳥(草彅剛)のパートも然り。戦争が激化しているとき、上海にいた彼は、日本が負けた瞬間、危険な目に遭う。中国人に銃を向けられ、どうなるのか……と思わせて、スズ子と茨田の出たコンサートには間に合った。

 羽鳥と上海のエピソードは、ブギというアメリカの音楽に心惹かれた羽鳥が戦後の日本でブギを流行らせる流れに必要なエピソードである。「東京ブギウギ」誕生の折にドラマにありがちな説明セリフで片付ける手もあるが、ここは重要キャラ羽鳥の活躍も入れておこうということなのか、上海の場面をわざわざ作りながら、最もドラマティックになりそうな、音楽会や羽鳥が中国政府に捕まってからどう帰国するかは説明セリフで片付けられたことはいささか残念だった。

 その分、力の入っていたのは、戦後に復活したコンサート。茨田は特攻隊の若者の心は救えても命を救えなかった歌に絶望を感じていたが、スズ子の励ましで、その苦しみを歌の深みに変えることができた。スズ子は、歌でみんなを元気にするという気概で、ステージ狭しと踊りまくり、これまで以上のパフォーマンスを発揮し、観客を喜ばせた。

 何はなくとも“歌”の力の表現に最も重きを置く『ブギウギ』。スズ子の「ラッパと娘」を演奏する、楽団の面々の表情も生き生きしていた。スズ子たちは、音楽とステージがなくては生きられないのだ。日本は戦争に負けたけれど、自分たちの愛する音楽を守り抜いたという点においては、音楽家たちは負けなかったともいえるだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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