『作りたい女と食べたい女』の“心地よさ”とは? 比嘉愛未&西野恵未の“幸福な出会い”
そんな2人が互いの「作りたい」と「食べたい」を少しの調味料も混ぜず、素のまま味わい尽くしながら、これまで受けた傷を癒していく過程を本作は静かに映し出す。驚くことに、このドラマには人と人の関係性を描く上で欠かせない“対立”が一切ない。それは、野本さんと春日さんが配慮し合って、互いにとって心地いい空間づくりに努めているからだ。“遠慮”ではなく“配慮”であることが重要で、特に注目したいのが春日さんが思っていることを相手に主張する場面。淡々としているが、明瞭ですっと心に届く物言いに、これまで演技未経験の西野がオーディションでこの役を射止めた理由が隠れている気がした。
そして、そんな春日さんと交流を深める中で、自分の周りの人とは異なる部分も受容できるようになっていく野本さんも見どころ。比嘉は春日さんが引き出す野本さんの“彩り”を表現し、西野もまたその“彩り”に触れた春日さんの小さくとも目に見える変化を私たちに伝えてくれる。一方通行じゃない、互いに影響し合いながら引き出される芝居と、なにより2人の間に流れる穏やかな時間が心地いい。野本さんと春日さんがそうであるように、比嘉と西野も出会うべくして出会った俳優同士だと感じた。
シーズン1では野本さんが春日さんに対する感情に一つの結論を出すところまでが描かれた。では、春日さんにとって野本さんとは? という疑問の答えが1月29日から始まるシーズン2では明らかになっていくのではないだろうか。その前に1月9日からはシーズン1の全10話が再放送されるため、すでに視聴済みの方もぜひ奇跡的な出会いをプレイバックしてほしい。
■放送情報
夜ドラ『作りたい女と食べたい女』Season1(再放送)
NHK総合にて、1月9日(火)スタート 毎週月曜〜木曜22:45~23:00放送(全10話)
出演:比嘉愛未、西野恵未、森田望智、中野周平(蛙亭)、野添義弘ほか
原作:ゆざきさかおみ
脚本:山田由梨
音楽:伊藤ゴロー
制作統括:坂部康二(NHKエンタープライズ)、大塚安希(MMJ)、勝田夏子(NHK)
制作:NHKエンタープライズ
制作・著作:NHK、MMJ
写真提供=NHK