『だが、情熱はある』は現代人への讃歌に “魂の念写”を成し遂げた髙橋海人&森本慎太郎
このたび発売されたBlu-ray&DVD-BOXには本編のほかに、約140分のメイキング映像が収録されている。そこには、本編を全話観た視聴者が感じ取った「情熱」の正体ーー「何がこんなにも本作を傑作たらしめたのか」ということの答え合わせが詰まっている。
本作のオファーがきた時、髙橋海人は「自分が若林さん? できるわけないでしょ」と思ったという。森本慎太郎は撮影に入る前後の心境を「世の中の人がどういうふうに見るのか不安だった。怖さしかなかった」と振り返る。実在する、しかも「殿堂入りした人物」ではなく、現役で活躍する芸人を演じる。ものまねとは別次元の、「魂の念写」のような作業を行いながらの、難易度の高い芝居。それに加えてオードリー、南海キャンディーズの漫才を完璧な形で再現しなければならない。この至難の業に挑み、期待値を遥かに超えるクオリティで成し遂げてくれた主演の2人に、改めて大きな拍手を送りたい。
メイキング映像には、クランクインからクランクアップまでの記録が収められており、撮影を重ねるごとに髙橋と森本の顔つきが変わっていくのがわかる。次第に役を掴んで自分のものにし、作品世界のなかで「若林と山里」として生き、濃密で実りある時間を重ねていったのだとわかる。
また、現役の芸人の半生をドラマ化したという特殊性がプラスに作用している。役作りのため髙橋は若林に、森本は山里に、綿密なヒアリングをしたという。そのうえで、ふたりともオードリーと南海キャンディーズの漫才の映像を何百回と見て聞いて、身体に落とし込んだ。
髙橋は「漫才中の半間(半分の間)の違いで笑いの量が変わる」と実感して「生の間」にこだわった。森本は撮影の最中に山里に直接電話をかけて、路上時代の漫才のオチのつけ方について相談した。本作の綿密さと熱量の高さは、こうしたリスペクトの響きあいから生じる「細心」の膨大な積み重ねの結果なのだと納得した。
髙橋と森本は、若林と山里の人生を、共鳴しながら追体験していく。最初は手探りで、それでも懸命に食らいついて、だんだんふたりが笑いについて、芸人について、人生について、「ことの意味」を体得していくのが伝わってくる。そしてそれは若林と山里が、紆余曲折ありながらも掴んでいった「何か」と似ている。
このドラマは実話を元にしたフィクションでありながら、髙橋と森本を追ったドキュメンタリーの要素もあると感じていたが、メイキング映像を観てさらにその思いを新たにした。若林と山里がさまざまな人との出会いと別れや、家族との関係を通じて変化していったのと同じように、髙橋と森本も共演者との関係性を構築していく。特に相方である春日(戸塚純貴)としずちゃん(富田望生)との間に、どんどん阿吽の呼吸が出来あがっていく過程が熱い。実にこれこそが「情熱」だ。
クランクアップの日、髙橋は「皆さんの情熱に引っ張られた。(個人的な転機があった中でも)この現場があって、楽しく切り替えて乗り切れた」と振り返り、森本は「人として成長できた期間だった。知らない感情を山里亮太さんを通して知り、ステージが何個も上がった気がして」と語った。このドラマは上質なエンターテインメントであり、彼らを追ったドキュメンタリーであり、現代社会において生きづらさを抱える人々にとっての「お守り」のようでもある。ぜひパッケージとして手元に置いておきたい一作だ。
■リリース情報
『だが、情熱はある』
12月20日(水)Blu-ray&DVD-BOX発売
Blu-ray BOX:31,240円(税込)
DVD-BOX:25,190円(税込)
<映像特典> ※セルBlu-ray BOX、DVD-BOX共通
・スペシャルメイキング
<封入特典> ※セルBlu-ray BOX、DVD-BOX共通
・特製ブックレット
出演:髙橋海人(King & Prince)、森本慎太郎(SixTONES)、戸塚純貴、富田望生、三宅弘城、池津祥子、ヒコロヒー、渋谷凪咲(NMB48)、中田青渚、箭内夢菜、森本晋太郎(トンツカタン)、加賀翔(かが屋)、賀屋壮也(かが屋)、藤井隆、坂井真紀、白石加代子、光石研、薬師丸ひろ子
脚本:今井 太郎
主題歌:『こっから』SixTONES(ソニー・ミュージックレーベルズ)、『なにもの』King & Prince(UNIVERSAL MUSIC)
音楽:T字路s
演出:狩山俊輔、伊藤彰記、長沼誠
プロデューサー:河野英裕、長田宙、阿利極
チーフプロデューサー:松本京子
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
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