『ホーム・アローン』だけじゃない! 大人も子どもも楽しめる定番クリスマス映画4選
クリスマススピリットに溢れた『東京ゴッドファーザーズ』
日本のアニメ映画『東京ゴッドファーザーズ』(2003年)は「与えること」を中心とした、クリスマススピリットに溢れた作品だ。
自称元競輪選手のギンちゃん(江守徹)、元ドラァグクイーンのハナちゃん(梅垣義明)、家出少女のミユキ(岡本綾)の3人は、新宿の公園に暮らすホームレス。クリスマスの夜、ゴミ捨て場にクリスマスプレゼントを探しに行った3人は、そこで生まれたばかりの赤ん坊を拾う。赤ん坊を「清子」と名付け、自分で育てると言い張るハナちゃんを説得し、3人は実の親探しを始めるが、行く先々で騒動に巻き込まれていく。
『パーフェクトブルー』(1997年)、『千年女優』(2001年)につづく、アニメ界の鬼才・今敏による長編劇場映画3作目である本作は、同監督の作品としては珍しく、ファンタジー要素がなく、徹底的にリアリティをもって描かれている。赤ん坊の実の親を探す過程で、徐々に明らかになっていく3人の過去、家族への思いが、切なくもあたたかい。
また、3人が清子の親を探すのは純粋な気持ちからで、なにか見返りを求めているわけではない。たとえゴミ捨て場に置き去りにされていたとしても、「親も今ごろは後悔しているかも」と家族の愛を信じ、トラブルに巻き込まれても、足を止めずに進んでいく。誰かのために見返りを求めずに行動することは、クリスマスの精神そのものだ。
信じる心が奇跡を起こす『34丁目の奇跡』
さて、クリスマスの話をするときに、1人忘れてはいけない人物がいる。サンタクロースだ。『34丁目の奇跡』(1994年)は、サンタの存在を信じない少女スーザン(マーラ・ウィルソン)が、自分は本物のサンタクロースだと言う老人クリス・クリングル(リチャード・アッテンボロー)と出会い、夢を取り戻していく物語だ。
老舗百貨店コールズで働くシングルマザーのドリー(エリザベス・パーキンス)は、自らが手掛けたクリスマスイベントのサンタ役に、自分を本物のサンタクロースだと信じるクリスを採用する。彼の誠実な態度は子どもたちのみならずその親にも好印象を与え、コールズの売上はうなぎ登りに。しかしそれを面白く思わないライバル百貨店のショッパーズは、クリスにサンタ役を横取りされたという男を雇い、彼を挑発し暴力事件を起こさせる。逮捕されたクリスは、「自分はサンタクロースにふさわしくない」と子どもたちの夢を守るため、精神異常を装い病院に収容された。ドリーに思いを寄せる弁護士のブライアン(ディラン・マクダーモット)は、彼の弁護を買って出て、前代未聞の「サンタクロースは実在するのか」を争う裁判が始まる。
サンタクロースが登場する映画は、その多くが彼の魔法によるファンタジーとして描かれるが、『34丁目の奇跡』では、サンタクロースことクリス・クリングルは一見普通の老人として描かれている。彼はサンタクロースとして仕事をするクリスマスイブ以外は、老人ホームで普通に生活しているのだ。アッテンボロー演じるクリスはとてもチャーミングで、彼がサンタだと言うなら本当にそうなのだろうと信じたくなってしまう。母ドリーから「サンタは存在しない」と教えられていたスーザンも、彼と過ごすうちに「サンタは本当にいるのではないか」「クリスは本物のサンタクロースではないか」と考えるようになる。しかし本作で本当に重要なのは、スーザンのような子どもがサンタクロースを信じるかどうかではない。子どもは親に教えられたものを信じる。ここで大切なのは、スーザンの母であるドリーが夢を信じることができるかどうかだ。
クリスマス映画には数多くの名作があるが、今回はそのなかでも、大人も子どもも楽しめる鉄板の作品を紹介した。家族と過ごす人も、友人や恋人と過ごす人も、あるいは1人で過ごす人も、ぜひこれらの作品を観て、あたたかく楽しい、素敵なクリスマスを過ごしてほしい。
■放送情報
『ホーム・アローン』
日本テレビ系にて、12月22日(金)21:00〜22:54放送
監督:クリス・コロンバス
脚本・製作:ジョン・ヒューズ
撮影:ジュリオ・マカット
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マコーレー・カルキン(矢島晶子)、ジョー・ペシ(青野武)、ダニエル・スターン(江原正士)、ジョン・ハード(有本欽隆)、キャサリン・オハラ(鈴木弘子)、ロバーツ・ブロッサム(清川元夢)、アンジェラ・ゴーサルズ(神代知衣)、デヴィン・ラトレイ(高木渉)、ゲリー・バンマン(富田耕生)、ヒラリー・ウルフ(ならはしみき)、ジョン・キャンディ(屋良有作)、マイケル・C・マロンナ(伊倉一恵)、テリー・スネル(片岡富枝)
©1990 Twentieth Century Fox Film Corporation.