タイトルにある『コタツがない家』とは、一見すると温もりがないことを暗示しているように思える。筆者も本作の第1話を観てそう思っていたが、今では深堀家にコタツは必要ないと、2着になった7万円のダウンコートや和室に突如現れたサウナを巡っての温もり溢れる家族ゲンカが家の中をポカポカにしてくれるのだと、当初持っていた意味合いから逆転していることに気づかされる。

　11年半かかってようやく自身の漫画を完成させた悠作を万里江は尊敬の念から抱きしめる。それは同時にきっと30年後も変わることのない、家族としての幸せ、温もりをも抱きしめていたのではないだろうか。「フヒヒ」と肩を上げて嬉しそうに笑う悠作、もう一度原稿を読もうとする実はいじらしいところがある万里江を見て、「これで最後か」と一抹の寂しさを覚えた。

　「フカボリ遊策」にとって待望の新刊となった『コタツがない家』がビックリするほど売れなかったというオチも、『SLAM DUNK』（集英社）で山王戦の後にウソのようにボロ負けする湘北のようで潔い。きっと、そんなこともまた深堀家ではケンカの種となって、ゴングが鳴っているはずだから。

■配信情報
水曜ドラマ『コタツがない家』
TVer、Huluにて配信中
出演：小池栄子、吉岡秀隆、作間龍斗、ホラン千秋、富田望生、河野真也（オクラホマ）、平澤宏々路、中川大輔、野々村友紀子、石川萌香、高橋惠子、北村一輝、小林薫
脚本：金子茂樹
演出：中島悟、丸谷俊平
プロデューサー：櫨山裕子、大護彰子、市山竜次
チーフプロデューサー：田中宏史
制作協力：オフィスクレッシェンド
製作著作：日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト：https://www.ntv.co.jp/kotatsuganaiie/
公式X（旧Twitter）：@kotatsu_ntv
公式Instagram：@kotatsu_ntv