『勝利の法廷式』は類を見ないリーガルドラマに 志田未来の半生と重なる運命的な役柄
志田未来が主演を務めたドラマ『勝利の法廷式』(読売テレビ・日本テレビ系)のBlu-ray&DVD BOXが、12月13日に発売される。
本作は、親友を冤罪で殺人犯にしてしまい法廷を去った弁護士・神楽蘭(志田未来)が、脚本家・黒澤仁(風間俊介)の力を借りて、現代社会の闇を暴く、劇場型リーガルミステリードラマだ。
2023年は『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)を皮切りに、『ブラックポストマン』(テレビ東京系)、『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)、『リエゾン-こどものこころ診療所-』(テレビ朝日系)といった連続ドラマ、さらには現在放送中の『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)への出演が控えていたりと足踏みすることなく、常にドラマに出続けていた志田。その中で彼女が20代最後の作品として主演を張ったのは、運命的とも言える役柄だった。それは蘭が幼少期に天才子役として活躍した過去を持つということ。言わずもがな、志田も6歳の時から子役として様々な作品に出演しており、そういった背景が少なからず役にリアリティをもたらしていると言っていい。本作を未視聴の場合、そんなの設定の一つだろうと思うかもしれないが、これが後々意外なところで重要な鍵となってくるので、決して無視できないポイントでもある。
日本のみならず、世界中で新たな作品が生まれ続けているリーガルドラマ。日本の場合、法廷に立つ弁護士とそのバディが変わった組み合わせであるというのがパターンにあるが、『勝利の法廷式』もその例に漏れない。だが、脚本家である黒澤の台本を、蘭が法廷で演じるという、言ってしまえば信じがたいシナリオは、後にも先にも本作だけだろう。蘭が担当する事件について黒澤が徹底的に調べ上げ、裁判の展開を先読みして、脚本を書き上げる。冷静になってみると、「そんなこと可能なの……?」と誰もが思ってしまうだろうが、黒澤のミステリアスな底知れなさと蘭の演技力によって理屈抜きの説得力を生み出していく。
それに、台本通りにいかないことももちろんある。それが、法廷という名の劇場で筋書きを超えたドラマが始まる瞬間。過去のトラウマから法廷に立っても自分の言葉が上手く出てこなくなってしまった蘭。そのトラウマを乗り越え、勇気を出して一歩前に踏み出していく姿――アドリブという自分の言葉で被告人に問いかけ、クライマックスへと物語を進める様は観ていて気持ちの良いカタルシスを生む。それは時に語りかけるように優しく、ある時は涙を流しながら激しく問い詰めることもある。蘭が見据えているのは真実の先にある、目の前にいる人たちの未来を照らすことだからだ。本作の核心に触れてしまうので、ここでは詳細は控えるが、最終話で真犯人と法廷で対峙する蘭、そして黒澤とのシーンは、志田の俳優人生においても屈指の名演である。