『ゴジラ-1.0』なぜ全米で大ヒット? 観客の反応から浮き彫りになるハリウッドの課題

低予算映画としての賞賛

 ゴジラそのもののビジュアルと、破壊描写のVFXの出来の良さに言及するファンも多い。特にハリウッドはマーベルのような大きなスタジオ作品のVFXの質低下、労働環境問題を抱えている最中ということもあって、映像表現への関心が高まっている。そんな中で『ゴジラ-1.0』はVFXがいかに自然であったかという点だけでなく、映像、脚本、キャラクター、これらすべてにおいて高クオリティでありながら、低い製作費(噂によると1500万ドル)で作られていることに対する驚きと称賛の声が強い。米紙Forbesは以下のように本作を評している。

 「1500万ドルの予算で作られた本作の物語は、劇場を出た瞬間に忘れてしまう悪い脚本と凡庸で1次元的なキャラクターで構成された製作費2億ドルの映画よりもはるかに良いことがわかった。説得力のあるストーリーがあれば、数千万ドルの費用がかかる有名なハリウッド映画スターが必要ないことも本作を通して得た教訓である」

 日本では製作費約22億円という数字は大きく感じてしまうかもしれないが、海外、とくにハリウッド基準では3000万ドル以下で作られる作品は低予算に位置づけられることが多い。実際、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が約1.7億ドル、『ゴジラvsコング』が約1.6億ドルで製作されており、それらの数字を並べると『ゴジラ-1.0』がいかに低予算で作られたのかがわかる。

 今回、アメリカのオーディエンスの反応や感想を見ていて特徴的に感じたのは、映画批評家に限らず、ストリーマーやTikTok一般投稿者の誰もが「この製作費で映像もキャラクターも脚本も良い作品が作られること」への意見を持っていたこと。それは裏返せば、多くの国民が昨今のハリウッドの映画製作に関して何らかの意見や関心を持っていることを意味する。そして12月8日からは宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』の全米公開がスタート。2週にわたって日本の映画が注目を浴びている状態なのである。『君たちはどう生きるか』の評判もかなり高く、興行収入にどのように反映されていくか気になるところだ。日本でようやく『オッペンハイマー』の公開が決定した今、アメリカでは第二次世界大戦を日本の視点で描く作品が賞賛されている。

■公開情報
『ゴジラ-1.0』
全国東宝系にて公開中
出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介ほか
監督・脚本・VFX:山崎貴
音楽:佐藤直紀
制作プロダクション:TOHOスタジオ、ROBOT
配給:東宝
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公式サイト:https://godzilla-movie2023.toho.co.jp
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