『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は“歪んだ社会”を照射する 昭和からの変化を捉えた作品に

 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』で舞台となった昭和31年(1956年)以降、資本が集まった東京はどんどんと発展していく。昭和34年に5年後の東京オリンピックの開催が決まり、急ピッチで開発が進んでいく。オリンピック開催が翌年に迫った昭和38年が舞台となった宮崎吾朗監督による『コクリコ坂から』には、横浜から東京にある出版社を訪ねた主人公たちを通して、東京タワーがすでに建ち、首都高の工事が行われ、工場の煙突から煙がもくもくとはき出されている東京の喧噪ぶりが描かれる。

 そうした発展の資金や人手はどこから来たものなのかを考える時、『君たちはどう生きるか』や『マイマイ新子と千年の魔法』、そして『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』に描かれた地方が浮かぶ。とりわけ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、妖怪エンターテインメントとして楽しませつつ、『君たちはどう生きるか』と『コクリコ坂から』の間で深まった、地方が都会に依存する構造をくっきりと描いたものとして位置づけられる。

 時代はさらに進み、地方から都会へといった流れはさらに進んで過疎化のような現象が起こり始める。それならダムを造ってエネルギーなり農業用水なりを得ようとする動きが起こる中、ダムに沈むことになった村を描いたアニメ映画が、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』と同じ東映アニメーションによって作られた、宇田鋼之介監督のアニメ映画『虹色ほたる~永遠の夏休み~』(2012年)だ。

 現代から昭和52年にタイムスリップしてきたユウタという少年が、まもなくダムに沈む村で明るく生きる人たちと交流する内容で郷愁を誘う。長老にあたる青天狗と呼ばれる神主は、ユウタに「人であろうと物であろうと、終わりというものはある」と語り、「失ったものは戻らぬ。だから人は嘆き苦しむ。されど時は止まらん」と言って運命を受け入れ、その後をしっかりと生きていく必要を説く。『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の龍賀時貞にそのような諦念があれば、沙代や時弥は悲劇に見舞われず休日の銀座を満喫していたかもしれない。

 もっとも、現代を舞台に鬼太郎やねこ娘が活躍する『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズが今なお作られ続けるのは、変わらないまま進んだ社会が、結果として都会も地方も問わず歪ませ崩しているからなのかもしれない。哭倉村の惨劇も、沙代や時弥の絶望も起こさせたくないと励む鬼太郎たちの思いに人間は、社会は応えているだろうか?

■公開情報
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
全国公開中
出演:沢城みゆき、野沢雅子、関俊彦、木内秀信、種﨑敦美、小林由美子、白鳥哲、飛田展男、中井和哉、沢海陽子、山路和弘、皆口裕子、釘宮理恵、石田彰、古川登志夫、庄司宇芽香、松風雅也
監督:古賀豪
脚本:吉野弘幸
キャラクターデザイン:谷田部透湖
制作:東映アニメーション
配給:東映
©︎映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
公式サイト:https://kitaro-tanjo.com/
公式X(旧Twitter):@kitaroanime50th

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