『大奥』“家定”愛希れいかを守るための大奥が誕生 有功の思いは流水紋とともに瀧山へ

「みなの思いに寄り添い、渇きを癒し、涙を洗い、時に四季を映し、なぐさめる。水の流れのようにここにありたいと望んでいる」

 大奥総取締となった万里小路有功(福士蒼汰)の思いがおよそ200年の時を経て、流水紋とともに最後の大奥総取締となる瀧山(古川雄大)へと受け継がれたNHKドラマ10 『大奥』第16話。 ついにラストパートとなる「幕末編」がスタートし、本作が描く男女逆転の大奥という場所の本質が浮かび上がってきた。

 1841年に崩御した徳川家斉(中村蒼)が生前に推し進めた熊痘により赤面疱瘡が撲滅。再び男性が要職に就くようになった世の中で、腰の重い兄に代わり家督を継いだ阿部正弘(瀧内公美)は肩身の狭い思いをしていた。そんな彼女の気を引き締めたのが、花街・芳町でたまたま出会った陰間の瀧山だ。「ここを出たら今度こそ己の翼で飛びたい」といつか学者になることを夢見て、日々書物を手に取る彼の野心やひたむきさに正弘は心を打たれる。そして思う、「私も阿部の忠義を見せねばなりませぬ」と。彼女は徳川家康に影武者として仕えた阿部正勝の子孫であり、自身もいざという時は身代わりになる覚悟で次期将軍となる徳川家定(愛希れいか)に仕えるべく幕政に励んだ。

 しかし、老中の座に上り詰めたとき、正弘は家定の身代わりになるということがどういうことかを思い知らされる。彼女は幼い頃からずっと、父である12代将軍・徳川家慶(髙嶋政伸)の慰み者にされてきたのだ。当初、事あるごとに家定の料理に付き合わされ、不思議に思っていた正弘だったが、のちにそれは家慶から逃れるためであったことを知り、家慶の父・家斉の正室だった茂姫改め広大院(蓮佛美沙子)に窮状を訴える。

 家定からは「無茶はするな」とたしなめられるが、それは正弘の立場を案じてのこと。これまで彼女が誰にも助けを求めなかったのも、逆らえぬ立場にある家臣たちが自分を助けようとして家慶に睨まれるのを避けるためだろう。月に4度あった嫌なことが2度になっただけで十分と諦念の笑みを浮かべる家定がいたわしい。聡明で人を思いやる心を持った彼女がどうしてこうも理不尽に傷つけられなければならないのか。

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