『きのう何食べた?』に坂東龍汰が新風を吹き込む 大切だからこそ伝えないといけないこと

 千波の思いがけない一言に、田渕は気の抜けた顔で「え?」と驚いた。カルボナーラの感想と同じくらいの熱量で思いを吐き出した千波は、涙ながらに語気を強めてこう言った。

「自分で作った料理でそんなに幸せになれるなら、ひとりで暮らせばいいじゃない!」

 千波の言葉に、田渕は呆気に取られる。ケンジと話す中でも、田渕は千波の言葉にピンときていないようだった。ケンジが千波の本心を察する。

「千波さん、田渕くんのこと、すっごく好きだったんだよ」
「だから『おいしい』って喜ばせてあげられない自分が、悲しかったんじゃないかな」
「人がどういうことで、どれくらい傷ついちゃうかって、実際のところ本人じゃないと分からないからね」

 さっぱりとした性格の田渕だから、別れに納得できなくとも、千波を引き留めることはないだろう。けれど、ケンジの言葉を聞いた田渕が、自分の言動が誰かを傷つけているかもしれないことを見いだしたかのように真剣な表情を見せたことが心に残った。

 物語序盤、美江(高泉淳子)の顧問先へ同行したシロさんこと筧史朗(西島秀俊)の言葉が思い出される。

「無自覚なんでしょうね。人は自分が身近な誰かをひどく傷つけていることに気づかなかったりするものです」

 美容室では、店長の三宅(マキタスポーツ)の妻・玲子(奥貫薫)が独立の準備を進めている。「この店とも、あの人とも、そろそろ潮時かな」という玲子の言葉に、スキャンダル好きの田渕は興奮気味だが、三宅と玲子の関係も、田渕と千波の関係も、気づかないうちに身近な誰かを傷つけているかもしれないという大事なことを教えてくれた。「俺、あの店、当分辞めれないっすよ」と話す田渕の力強さには呆れて笑ってしまうが、今後、彼の言動にもちょっとした変化が見られるのかもしれない。

■放送情報
ドラマ24『きのう何食べた? season2』
テレビ東京系にて、毎週金曜深24:12~放送
Lemino、U-NEXTにて、各話放送終了後から第1話〜最新話見放題配信
出演:西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、田中美佐子、田山涼成、梶芽衣子
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、松本佳奈、平田大輔
音楽:福島節、澤田かおり
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:阿部真士(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
企画監修:神田祐介
制作:テレビ東京、avex pictures
制作協力:オフィス・シロウズ
製作著作:「きのう何食べた? season2」製作委員会
©︎「きのう何食べた? season2」製作委員会 ©︎よしながふみ/講談社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta2/
公式X(旧Twitter):@tx_nanitabe
公式Instagram:@movie_nanitabe

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