『らんまん』万太郎と植物学教室の別れ 徳永が最後に贈った万葉集の歌の意味

 何年経っても2人の関係性は変わらず、同じあの仁淀川をずっと並んで走っている。万太郎が「ただの植物学者でありたい」と願うように、佑一郎も大学の派閥問題に巻き込まれない、現場主義の「ただのエンジニアでありたいき」と心境を吐露する。お互いの志を信じ合えているからこそ、別の道を行ったとしても目指す場所が同じだとわかるのだ。「ほんならの」とお互い名前を呼び合って、背中を向けてそれぞれの金色の道を歩き出した。

 年明けには神社合祀令の反対運動が世論を動かし、無事に神社の一部が保全されることになった。そして明治の時代の終わりに千歳(遠藤さくら)が虎鉄(濱田龍臣)と結婚する。寿恵子(浜辺美波)が園子に向けて挨拶をしている姿が切ないが、幼い娘を亡くした万太郎と彼女にとってその後に生まれてきた子どもたちが健やかに育ってくれたことは何より嬉しかっただろう。「千歳」という名前に、ただ生きてくれという願いを精一杯込めたと話す万太郎。そんな彼に千歳は言った。

「それが一番の贈り物です。名付けてくださってありがとう、お父ちゃん」

 名付けること。命に名を与えることの意味が、万太郎がこれまで行ってきた植物の命名に重なっていく。きっと合祀令によってなくなってしまうはずだった植物たちも、万太郎に名付けられ、その価値と存在の意味が周知された植物たちも、万太郎に礼を言っていることだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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