『ちいかわ』『おでかけ子ザメ』などショートアニメ人気の背景 本編は短く、寿命は長く
1話につき5分以下で完結するショートアニメが、今のアニメ界の新たなトレンドとなっている。かつては「子供向け作品」というイメージが強かったが、最近のショートアニメは、『PUI PUI モルカー』や『ちいかわ』などのヒット作品を筆頭に、子供だけでなく大人も楽しめるものとなっている。5分という短い時間の中で視聴者を引き込むショートアニメの魅力とは、何なのだろうか。
ショートアニメが人気になった理由の一つは、短時間でストーリーを楽しめる簡潔さにある。30分構成のアニメは1クールを通して視聴しないと内容が理解できないものが多いなか、ショートアニメは前後のつながりを気にせずとも楽しめるライトな物語が多いため、「パッと観られる」手軽さもある。さらに『ちいかわ』のようにSNS上で漫画が公開され、一定のファンダムを築いた後にアニメ化されるケースも増えてきた。2024年1月から放送が予定されている『貼りまわれ!こいぬ』も、SNS上で人気を集めた作品の一例に挙げられる。
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さらに、かわいらしいビジュアルからは予期せぬ方向で大人に刺さるツボを押さえている点も人気の理由だ。たとえば、『PUI PUI モルカー』では、モルカーが踵を返すシーンで映画『AKIRA』のオマージュを用いる(『AKIRA』のポスターをオマージュした画の登場回も)など、モルカーたちのシュールな行動が視聴者の笑いを誘った。また、『ちいかわ』では、草むしりを労働として描いた「草むしり検定編」がファンから高い支持を受け、仕事に疲れた大人の心をくすぐっている。
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ショートアニメでは、キャラクターたちが少しずつ成長していく姿が描かれることが多いため、視聴者がつい共感して応援したくなる側面もあるのだろう。その点では、現在放送中の『おでかけ子ザメ』が徐々に人気を集めている。この作品は、自身がサメでありながら大の“サメ好き”である主人公・子ザメちゃんの表情や仕草が愛おしい物語として展開されている。
そんなゆるさを持ちながらも、新しい発見を求めて冒険に出かける姿勢を見せてくれる子ザメちゃん。子ザメちゃんの冒険心と好奇心は、まるで親戚の子どもの成長を見守っているかのようなほっこりした気分にさせてくれる。
加えて声優の花澤香菜がメインキャストを務めている点も魅力の一つである。エンディングで花澤が歌う「よりみち」は、軽快なリズムと花澤の可愛らしい声に、子ザメちゃんの動きが重なって癒し効果抜群。しかし、子ザメちゃん独自の言葉で歌われているため、「一緒に歌うには難易度が高すぎる」というシュールさもあるのが、『おでかけ子ザメ』ならではのエンディングの楽しいところ。一曲完璧に歌えるようになるまで、何度でも聴きたくなるクセのあるエンディングだ。