『グランツーリスモ』北米No.1 『バービー』は『スーパーマリオ』抑え2023年トップに

 2023年8月27日は、昨年に続き2度目の開催となる「全米映画デー(National Cinema Day)」。大手映画館チェーンを含む北米3000館で、全作品・全上映形式をわずか4ドルで鑑賞できる一日となる。

 この“年に一度のお祭り”にあたって、8月25~27日の北米映画週末ランキングは、人気ゲームの実写映画版『グランツーリスモ』と、公開6週目にして未だ首位を狙う『バービー』がデッドヒートを繰り広げている。

『グランツーリスモ』

 発表された週末興行収入の速報値によると、第1位は『グランツーリスモ』の1730万ドル、第2位は『バービー』の1710万ドル。その差はわずか20万ドルのため、追って告知される確定値では順位が入れ替わり、『バービー』がNo.1に輝く可能性もある。同じく速報段階では、「全米映画デー」当日の動員数は『バービー』がトップに立つ見込みなのだ。

 「全米映画デー」とは、映画館業界のコロナ禍からの復活を応援するために全米劇場保有者協会が主導して実施するもの。この日は多くの観客動員と、ポップコーンやドリンクの大幅な売上増が期待される。2022年は新作が乏しく、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)の再上映と『トップガン マーヴェリック』(2022年)がトップに立ったが、今年は各社の話題作が揃った。スタジオ的には興行収入が下がるため、さほど好意的ではないとも言われているが、本来は作品が豊富なタイミングでこそ重要な取り組みのはずだ。

『グランツーリスモ』

 『グランツーリスモ』は、近年盛んなビデオゲームの実写化としては異色の取り組み。ゲームのトッププレイヤーを本物のプロレース界に送り込んだ野心的プロジェクト「GTアカデミー」の実話を描いた一作で、主人公はゲームの『グランツーリスモ』からプロデビューを果たした実在のレーサー、ヤン・マーデンボローだ。監督は『第9地区』(2009年)、『チャッピー』(2015年)のニール・ブロムカンプが務めた。

 本作はデヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルームの共演も話題だが、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキにより俳優陣のプロモーションが実施できず、ソニー・ピクチャーズは当初の予定だった8月11日から北米公開を2週間延期。一部劇場で先行上映やファンイベントを実施することで観客の期待を高めてきた。前出の週末興収1730万ドルには、これら先行上映の興行収入530万ドルも含まれている。パラマウント・ピクチャーズが『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(2023年)で採用した戦略と同じだが、『バービー』のワーナー・ブラザースはむろん好意的には受け止めていないようだ。

 『グランツーリスモ』はRotten Tomatoesで批評家スコア60%・観客スコア98%。劇場の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A」評価と、観客の支持は随一だ。世界興収は5380万ドルと、製作費6000万ドルを回収するまでの道のりはまだ遠いが、口コミ効果でロングヒットとなる可能性も高い。日本では9月15日公開。

映画『バービー』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

 一方、『バービー』の北米興収は5億9480万ドルで、すでに『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を抜いて2023年の北米No.1に輝いている。世界累計興収は13億4030万ドルで、現地時間の28日にも『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2』(2011年)を超えてワーナー史上最大のヒット作となる。なお、遠からず世界累計興収でも『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を抜き、2023年のNo.1となる見込みだ。

『Blue Beetle』(Everett Collection/アフロ)

 前週第1位のDC映画『Blue Beetle(原題)』は、今週は第3位に下落。ところが興味深いのは、週末3日間の興収が1276万ドルで、前週からの下落率が-49%にとどまったことだ。多くのスーパーヒーロー映画は、熱心なファンが公開直後に映画館へ足を運ぶため、2週目の下落率は-60%を超えることが少なくない。興行的課題は大きい本作だが、なぜジンクスを破ることができたのか。滑り出しの興行規模が小さかったためか、それとも?

 クリストファー・ノーラン監督の最新作『Oppenheimer(原題)』は、公開6週目ながら第4位をキープ。上映時間3時間、かつR指定の伝記映画としては異例のヒットを継続しており、北米興収は3億ドルを突破して『インセプション』(2010年)超えを達成。海外市場では『ダークナイト』(2008年)を抜き、世界累計興収では8億ドルの大台突破も近い。巨大市場・中国では8月末に劇場公開だが、その結果やいかに。

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