柴咲コウ、『君たちはどう生きるか』は『クルエラ』に続く“声”の代表作に?

 あいみょん、木村拓哉、菅田将暉……と宮﨑駿監督の鋭いセンスを示すかのようなキャスティングが注目を浴びたジブリ最新作『君たちはどう生きるか』。宮﨑監督のキャスティングといえば、プロの声優よりも俳優を起用することで知られている。柴咲コウの選出はその一環でありながら、彼女ならではの声の演技で培ってきたスキルが活きる配役だった。

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 彼女の声の演技の核にあるのは、外国映画の吹き替えとアニメのアフレコの2つの要素から培ったキャラクターの声作りだ。

 声優としての柴咲は、『名探偵コナン 絶海の探偵』において、ゲスト声優として謎の女性自衛官・藤井七海役を演じるなど、実績を積んできた。2021年公開のアニメ映画『神在月のこども』では、主人公カンナの亡くなった母親役として存在感を示し、アニメ作品での声の演技でも安定感を見せた。

 柴咲の活躍はアニメ作品での成功だけにとどまらない。さすがは数々の作品で演技を極めてきた俳優だけあって、柴咲は実写映画でのアフレコ経験も持っている。そしてこの「実写吹き替えでの成功体験」は、柴咲の声の演技の礎とも言える。

 外国映画の吹き替えは、完成した作品にセリフをあてる作業であり、すでに存在する演技に声を重ねるものである。つまり、一から声を作るアニメのアフレコとは異なり、「元々の演技」に声の演技が少なからず影響を受けることも。さらに外国映画は実写作品であるため、俳優の微妙な表情や感情の変化を捉え、それを自身の声で再現しなければならない。

 この吹き替えならではのアフレコの難しさについて、過去に柴咲自身もこう述べている。

「アニメーションの声優はやらせていただいたことがあったのですが、映画として完成されていて役者さんたちが120%の力で演じていて、さらに効果音もあったりと、全部出来上がっている中に声を後から入れるというのはすごく難しいし、口もあわせないといけないとかそういう技術的なところの難しさがありましたね」(※)

 こうした難役への柴咲の努力もあってか、実写映画『クルエラ』での吹き替えは高く評価された。作中の柴咲の演技は、クルエラが持つかっこよさだけでなく、彼女の強がりな一面や、悪役の内面の葛藤を見事に表現していた。さらに柴咲は『マトリックス レザレクションズ』日本語吹替版の声優としても作品に参加している。こうした実写映画の吹き替え経験が、彼女の声の演技に深みと幅を与えていることは明らかだ。

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