前回のラストで九条（松岡茉優）は、2学期のことを“地獄”だと表現していた。8月12日に放送された『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』（日本テレビ系）の第5話は、そんな2学期の幕開けから始まる。1カ月後に迫った文化祭に向けて、クラスのなかで変わり者とされて浮いている瑞奈（詩羽）にフォーカスを当てながら、“青春”をテーマに掲げる。たしかにいつも通り不穏な空気は流れているとはいえ、少なくともこの時点ではまだ、それほど“地獄”になりそうな予感はないのである。

　文化祭の催しものの責任者として、九条は学外でアーティストとして活動している瑞奈を指名する。自分が選ばれたことへの戸惑いや、ダンス部の生田（莉子）からの反発などもありやる気を失った彼女に対し、九条は「文化祭の前日に“ある問題”が起きて今年の文化祭がなくなる」ということ、クラスメイトたちの常識を壊してほしいことを告げる。そんななか、週刊誌で瑞奈の通っている学校として鳳来高校が掲載され、職員室の面々は対応策に苦慮。それでも九条の後押しや鵜久森（芦田愛菜）たちの助力もあって文化祭に向けて準備が進められていくのだが、前日に起きるはずの“ある問題”が1週間早く起きてしまう。

　星崎（奥平大兼）たち一部の生徒のなかで取り沙汰されるようになる“九条先生2周目説”。もちろん視聴者にとってはそれがこのドラマの大前提であり、しかも鵜久森を不登校から救い出したことなど1周目で起きた事象＝過去を変える行動の数々によって、1周目との調和が乱れていることは明白だ。もちろんそれは、タイムリープSFの原理原則に則れば想定の範囲といえよう。前回江波（本田仁美）にちょっかいを出そうとしていた浜岡（青木柚）が相楽（加藤清史郎）とつながっており、相楽の指示を受けて前倒しで深夜の学校に侵入し、3年D組の教室を破壊。その一連が早まったことも、これまでの過去を変える行動に起因するものだ。

　なんにせよ、その破壊行動を受けて行われた臨時のホームルームのシーンは、九条による瑞奈に対する個別の“指導”以上に学園ドラマらしい流れであった。瑞奈にやたらと突っかかる生田からの謝罪の要求に対し、制止する鵜久森。そんな鵜久森に食ってかかる西野（茅島みずき）に、割って入る東風谷（當真あみ）と西野たちを教室から追い立てる阿久津（藤崎ゆみあ）。残った25人で文化祭の立て直しという一つの目標へと向かうことで、ほとんど相楽たち5人を除けば“九条派”になりつつある、あるいは同調性の高さゆえに“どちらでもいい”立場であることがよくわかる。

　瑞奈による圧倒的な歌唱で文化祭が大団円的にまとめ上げられたところで九条があることに気付く、鵜久森に対するある違和感。騒動の最中に発せられた「今回は」という発言と、1周目の時とはまるで違う鵜久森の行動の数々。そこで九条は、鵜久森も自分と同じように“2周目”なのではないかと勘付く。いよいよ『ブラッシュアップライフ』（日本テレビ系）みたいになってきているわけだが、よくよく考えてみれば、1周目において鵜久森は5月に不登校になりその後亡くなっていたことが第1話で描かれていた。亡くなるタイミングがいつなのかは明示されていなかったが、文化祭の騒動を知っているとなると、場合によっては2周以上している可能性も考えられる。そもそも異なるタイミングで命を落とした鵜久森と九条が、同じ“2周目”を歩むのだろうかなどということまで考えをめぐらせてしまう。その辺りの疑問が、次週以降のエピソードでうまく解消されるのだろうか。

■放送情報
土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演：松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美（AKB48）、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久（HKT48）、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、川本光貴、白倉碧空、細田善彦、長井短、サーヤ（ラランド）、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
演出：鈴木勇馬
プロデューサー：福井雄太、鈴木努、秋元孝之
チーフプロデューサー：田中宏史
主題歌：菅田将暉「ユアーズ」
制作協力：オフィスクレッシェンド
製作著作：日本テレビ
©日本テレビ
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