『らんまん』胸が張り裂ける園子の死 朝ドラの分岐点として象徴的に描かれる大切な人の死

 連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)の第18週となる「ヒメスミレ」が放送された。田邊(要潤)から大学への出入りを禁じられてしまった万太郎(神木隆之介)は、なんとか研究が続けられないかと博物館を訪れる。だが大学と協力関係にある博物館は、万太郎に力を貸すことができなかった。そんな時、野田(田辺誠一)は万太郎の研究者としての素質を高く評価する人物としてロシアの植物学研究の権威・マキシモビッチ博士の名をあげ、彼の元で研究することを万太郎に勧める。万太郎はロシアで研究を続けたいと寿恵子(浜辺美波)に申し出るのであった。

 研究への道に一筋の光が現れた頃、万太郎と寿恵子に悲しい出来事が訪れる。園子の死だ。

 高熱を出した園子を診た医者は「麻疹かもしれん」と告げる。まだワクチンもない当時、麻疹は「命定め」(生きるか死ぬかもわからないの意)と呼ばれるほど恐ろしい病であった。園子は小さい体で3日も熱と闘った末、天国へと旅立っていった。人生にありとあらゆる草花が咲き誇るよう園子と名付け慈しんできたわが子との別れに、万太郎と寿恵子は深い悲しみにくれる。喪失感と、やりきれなさ、悔しさ、そんな親としての苦悩が2人から伝わり、視聴者の心をも締め付けた。

 人生を描く朝ドラでは、主人公にかかわりのある人たちの“生死”についても取り上げられる。『らんまん』においては主人公の母であるヒサ(広末涼子)の死、祖母であるタキ(松坂慶子)の死が描かれ、その一方で園子の誕生が描かれた。そのたびに主人公は悲しみを乗り越え、また喜びを噛み締めながら、自らの人生に影響を与える人との関わり合いの中で変化し成長していく。こうした“出会い”と“別れ”の場面は近年の朝ドラでも繰り返し映されるが、こと“別れ”となると、主人公だけでなく視聴者にとっても胸が張り裂ける思いだろう。

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