『大いなる自由』“内心の自由”を表す本編映像公開 シーンの意図を解説する監督コメントも

 7月7日に公開される映画『大いなる自由』の本編映像が公開された。

 本作は、第74回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞受賞、第94回アカデミー賞国際長編映画賞オーストリア代表作品の人間ドラマ。第二次大戦後ドイツで男性同性愛を禁ずる「刑法175条」のもと、“愛する自由”を求め続けた男の20余年にもわたる闘いを描いた人間ドラマ。オーストリア人監督のセバスティアン・マイゼが監督・脚本を務めた。

『大いなる自由』本編映像

 公開された本編映像は、主人公・ハンス(フランツ・ロゴフスキ)が、シャワー室で並んだ若き音楽教師のレオ(アントン・フォン・ルケ)にある提案を持ちかける様子を捉えたもの。

 ハンスから点呼の時にわざと起きないように言われたレオはその意図が分からず、夜、言われたままに寝たフリを続ける。彼が居室から出され連れてこられたのは、屋外に設けた処罰者たちが集まる檻だった。そこには、ハンスの姿が。ハンスは、レオに「こんな所で悪いな」と声をかけるが、すっかり所内での振舞いを心得ていたハンスは、どのように看守の目をすり抜ければいいのか知っていたのだ。レオは「デートが?」と笑い、見つめ合うふたりは暗闇の中で初めてキスを交わす。刑務所の中にあっても、愛することを諦めようとしないハンスの“内心の自由”を表すシーンとなっている。しかし、ふたりが出会ったのは実はこの刑務所が初めてではなかった。

 この場面は、映画が描いた時代にドイツ北東部のマクデブルクで実際に使用されていた刑務所で撮影が行われた。マイゼ監督が多くの候補があった中でこの刑務所を選んだ理由は、施設の構造であるという。監督は、「この場所の構造は、あらゆる方面からの監視を目指す社会を象徴しているように感じました。映画の中で繰り返し登場する独房のドアの覗き穴、真夜中の点検などのある社会です。登場人物たちは常に監視されながらも自由な行動を求めて、あきらめることなく闘い続けるのです」と説明する。

 ハンスをめぐる3つの時代を描く上で、彼自身の内なるエネルギーの違いを意識していたという監督は、視覚的にも同じものを目指す中で、撮影監督を務めた『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督が初期代表作でタッグを組んだクリステル・フルニエに大いに助けられたという。

「クリステル・フルニエが照明のアイデアをくれました。その時代リアルに使われていた照明の色調をもとに構築していったのです。クリステルはさまざまな温度の光を取り入れ、そのおかげで私たちの物語にふさわしい彩りが加わり、ブルーグレーの刑務所の世界に生命が満ちあふれたのです」

 監督は、ハンスを演じたロゴフスキについて「フランツのキャスティングは、脚本を作っている時から夢に描いていたものでした。でも、彼がハンスを演じるにあたり、“ゲイの男性” そのものになることはできません。だから、自分の生きたいように生きられない、求めるものを手にすることができない……私たちは人生におけるどんな時にそういった感情を抱くのか、彼はそうやって想像をしながらキャラクターを作り上げてくれました」と振り返る。

 ロゴフスキは、「これは“同性愛の映画”というだけでなく、ラブストーリーであり、人間ドラマでもあります。今回ハンスを演じる上では、いくつか身体的なアプローチを試したり、ハンスの人生における“本当の感情”や“絆” を見つけようとしました 」と、役作りについて監督と呼応するようなコメントを寄せている。

 なお、7月9日にBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下での19時10分の回の上映後に、ロングラン上映が続く映画『エゴイスト』松永大司監督によるトークイベントが決定。チケットは、7月7日よりオンライン、劇場窓口にて発売開始される。

■公開情報
『大いなる自由』
7月7日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
出演:フランツ・ロゴフスキ、ゲオルク・フリードリヒ、トーマス・プレン、アントン・フォン・ルケほか
監督・脚本:セバスティアン・マイゼ
共同脚本:トーマス・ライダー
撮影監督:クリステル・フルニエ
編集:ジョアナ・スクリンツィ
音楽:ニルス・ペッター・モルヴェル、ペーター・ブロッツマン
配給:Bunkamura
2021年/オーストリア、ドイツ/116分/1:1.85/カラー/英題:Great Freedom
©2021FreibeuterFilm・Rohfilm Productions
公式サイト:https://greatfreedom.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/greatfreedomjp
公式Instagram:https://www.instagram.com/greatfreedomjp/

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