変更されたスタッフ陣に見る第2期の特徴

　そんな「懐玉・玉折」、そして続く「渋谷事変」に限らず、まずコミックのアニメ化作品において最初に目に留まるのが、作画だ。特に『呪術廻戦』は第1期も劇場版も“神作画”として、そこが非常に高く評価された。アニメ第2クールの「京都姉妹校交流会」編における戦闘シーンは、単に原作の描写をより力強いものにできたという“成功”以上に、スタッフ陣がどれだけ原作コミックに対して愛を持って取り組むのか、“いまのアニメ業界”における限界突破を目の当たりにしたような、そんな意味深いものだった。だからこそ、第2期の作画やキャラクタービジュアルが気になってしまうのは仕方ない。

　特筆すべきは、第2期と第1期でスタッフに変更が多く見受けられる点だ。シリーズ構成・脚本は第1期、劇場版を通じてお馴染みの瀬古浩司が担当する。しかし、監督は第1期と劇場版を担当した朴性厚に代わり、御所園翔太が務める。彼はアニメ業界人サークル「TAP」のメンバーでもあり（表記名gosso）、これまでに複数人のアニメーターによる描き下ろしイラストを使ったTシャツを販売し本人に還元させるなどして、アニメーターの枠にとらわれない活動もしていることが興味深い。加えて、オープンソースの統合型3DCGソフトウェアであるBlenderを使用するなど、新しい作画表現にも挑戦している。

　彼の実力は、実績を振り返れば分かりやすい。例えば『王様ランキング』では第7話「王子の弟子入り」と第21話「王の剣」の絵コンテ・演出・作画（共同）・原画（共同）を務め、特に神回とも名高かった第21話のボッジが城の壁を走るCGカットや、ボッスとのバトルシーンに彼の手腕がうかがえる。MAPPAが手がけ、国内外で注目を浴びた『チェンソーマン』にもオープニング映像の他に、重みがました物語の転換期となる第8話「銃声」の絵コンテ・演出（共同）で参加。何を隠そう『呪術廻戦』も、第2期が初参加というわけではなく第8話「退屈」の演出・原画、第17話「京都姉妹校交流会―団体戦③―」では絵コンテ・演出・原画を担当している。つまり狗巻棘の「動くな」や、禪院姉妹の戦いを手がけた人物だ。『ブラッククローバー』の第63話「何でも無い」など、他にも参加したエピソードを見る限り魚眼レンズっぽい接写や、キャラクターがメチャクチャに動く、そして背景の作画も相まってクオリティが高いという特徴が見受けられる。すでに公開されている「懐玉・玉折」のティーザー映像でも、その特徴は感じられた。

　そして副監督はアニメ第1期と劇場版を担当した梅本唯から、愛敬亮太に変わった。彼も『王様ランキング』や『進撃の巨人 The Final Season完結編（前編）』などの演出・絵コンテを務めてきた人物である。キャラクターデザインにはシリーズを通して担当してきた平松禎史が続投する上で、第1期でサブキャラクターデザインや総作画監督を務めた小磯沙矢香が加わる。第1期に比べて少しベタ塗りっぽいタッチなど、キャラデザの雰囲気が変わった印象だ。

　他にも、美術監督が金廷連から東潤一に、色彩設計が鎌田千賀子から松島英子に、3DCGディレクターが兼田美希と木村謙太郎から石川大輔（モンスターズエッグ）に、音響監督が藤田亜紀子からえびなやすのりに変更されるなど、大幅なスタッフ入れ替えが起きているため第1期と第2期の雰囲気は少し違うものになりそう。

　アニメ化に際して、五条と甚爾の戦いなど本編屈指のアクションシーンへの期待が高まるものの、やはりそれぞれのキャラクターが辛い想いをする章だからこそ、感情の機微に着目した映像化により期待したい。

■放送情報
『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」
MBS／TBS系にて、7月6日（木）スタート 毎週木曜23:56～放送
「懐玉・玉折」編：7月6日（木）～8月3日（木）放送
閑話（前編） 8月10日（木）放送
閑話（後編） 8月17日（木）放送
「渋谷事変」編：8月31日（木）〜放送
キャスト：中村悠一、櫻井孝宏、遠藤綾、永瀬アンナ、子安武人
原作：『呪術廻戦』芥見下々（集英社『週刊少年ジャンプ』連載）
監督：御所園翔太
シリーズ構成・脚本：瀬古浩司
キャラクターデザイン：平松禎史、小磯沙矢香
副監督：愛敬亮太
美術監督：東潤一
色彩設計：松島英子
CGIプロデューサー：淡輪雄介
3DCGディレクター：石川大輔（モンスターズエッグ）
撮影監督：伊藤哲平
編集：柳圭介
音楽：照井順政
音響監督：えびなやすのり
音響制作：dugout
制作：MAPPA
オープニングテーマ：キタニタツヤ「青のすみか」（Sony Music Labels）
エンディングテーマ：崎山蒼志「燈」（Sony Music Labels）
©芥見下々／集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト：https://jujutsukaisen.jp