『らんまん』『ラストマン』要潤の“悪役”が上手い! 思わず憎くなってしまう演技の妙
『らんまん』(NHK総合)第14週のスタートとともに、万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)の新婚生活もいよいよスタート。寿恵子は十徳長屋の個性が強いメンバーとも仲良くやっていけそうだ。万太郎は植物学教室に出向くと、波多野(前原滉)や藤丸(前原瑞樹)と夏休みの植物採集の様子や植物学雑誌の原稿について話に花を咲かせた。大学は新学期のスタートである。
波多野や藤丸によれば万太郎の奮闘に感化されるように、田邊(要潤)が植物の新種を見つけようと必死になっているそうだ。万太郎と田邊がいいライバルならいいのだが、なかなかそうもいかないのが難しいところである。なぜなら田邊は自分の利益を最優先に考え、時には手柄を横取りすることも厭わないからだ。
田邊は植物学雑誌が初めて出来上がった時、「私が雑誌を思い付いたからこそ、こうして形になったわけだ」と発言。もちろん他の人は、雑誌を作りたいと言っていたのは万太郎であると分かっていたため、怪訝な顔をしていたが所属する植物学教室のトップ・田邊の言うことに反論する人はいなかった。田邊の振る舞いは名誉を得たり、周囲からよく思われたいだけで行動しているように見え、好きな植物のことを好きなだけ考えていたい“草花バカ”の万太郎と比較すると、“悪人”に見えてしまう。要の爽やかであるがどこか胡散臭さが漂う笑顔や真顔になると怖ささえ感じられるような雰囲気がさらにそのイメージを強くさせている。
要は、本作と同時期に『ラストマン―全盲の捜査官―』(TBS系)に、全盲のFBI特別捜査官・皆実(福山雅治)の父・誠役で出演。当初、誠は強盗殺害事件の被害者で、不動産バブルの時代に幸運にも不動産業を営み、裕福な家庭を築いていた人物として描かれていたが、その富は、犯罪まがいのことをして地主から土地を買収していた地上げ屋だったことが判明。皆実の母・勢津子(相武紗季)とは、行きつけの料亭で出会い、結婚するが、その時誠には既に本妻がいたのである。
皆実にとってはあまり家には帰ってこないが特段悪い思い出のない、普通の父親だったようだが、バディの心太朗(大泉洋)が嫌がりそうな“悪人”の側の人間である。食堂を営んでいた鎌田(津田健次郎)の元に身を寄せていた勢津子を見つけ出して、連れて帰ろうとした誠は、鎌田にわざと嫌味な勝ち誇った顔を見せた。それがとても様になっており、観ている側に悔しい気持ちや怒りを湧かせるのは、要が誠という人物を見事に演じ切っている証拠といえるだろう。
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強盗に襲われたと思われていた勢津子を殺したのは、誠だった。実の子と思っていた息子が、実は勢津子と鎌田との間にできた子供であることに気付き、怒り狂ったのだ。地上げ屋として、暴力団とも繋がりがあり、恐喝のようなこともやっていたであろう誠が我を忘れる理由としてはあまりに人間くさく、今まで見せていなかった勢津子たちへの愛情が感じられた。