『スイートモラトリアム』Pに聞くドラマ化の狙い 「自分のことを好きになってもらえたら」

 元カノと今カノの狭間で揺れる主人公役で鈴鹿央士が翻弄されるドラマ『スイートモラトリアム』がTBSの深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」にて放送中だ。

 心(鈴鹿央士)を惑わす自由奔放な元カノ・大森りんご(小西桜子)と真面目で一途な今カノ・上条小夜(田辺桃子)。恋愛に不器用な3人の等身大のラブストーリーを映像化しているのが、映画『そばかす』などを手がけてきた玉田真也監督である。プロデューサーの近藤紗良、スーパーバイジング・プロデューサーの久保田修は本作にどんな思いを込めたのか。等身大の若者たちの姿を描くためにオファーに至ったという玉田監督の魅力など、じっくりと話を聞いた。

玉田真也監督作『僕の好きな女の子』を観て

ーー本作は、累計1800万ダウンロードを記録しているマンガアプリ「マンガボックス」に連載されていた、たまいずみさんによる同名漫画が原作です。ドラマ化しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

近藤紗良(以下、近藤):私が1年半ほど前に原作を読んで、すごく気に入っていたんです。TBSさんからこの枠のお話をいただいたときに、その候補として『スイートモラトリアム』がありました。今の若者たちが、モラトリアム期に悩むようなことと、もがいて成長していくまでが、きちんと表現されているところにとても共感して、是非やりたいですと手を挙げて、実現に至りました。

ーー今後の展開はとても面白くなりそうですよね。

久保田修(以下、久保田):精神的に少し危気のある元カノのりんご、その彼女に惹かれてしまう心、比較的健全な今カノの小夜、この3人のキャラクターのありようは、すごく今っぽいところでもあるのかなと思いますね。

近藤:心が今カノと元カノの間で揺れ動いてしまう心情って、元カノとの共依存の関係が原因だと思っていて。心のようにちょっとした自分の弱さから、他者に依存してしまう気持ちには共感する声も多いですね。

ーー演出を担当する玉田真也さんは、これまでも繊細な恋愛作品に定評がある監督です。

近藤:原作を読んだときに、心情の機微を丁寧に描いていくような作品だなと感じていて。玉田監督の映画『僕の好きな女の子』を観たときに、恋人未満の2人のやりとりをすごくビビットに演出されていて、このドラマの中でも描けたら若い視聴者にも刺さるんじゃないかなと思い、お願いしました。

ーー玉田監督の撮影現場はどんな雰囲気でしたか?

近藤:舞台出身でやられてきた玉田監督ならではといいますか、舞台稽古のような形式で、撮影前にリハーサルを行いたいという希望があり、撮影に入る前に5日程度、リハーサルの期間を設けました。出演者にはクランクイン前に役柄を掴んでもらうことができ、共演者同士のコミュニケーションを含め、芝居のやりとりをしっかり構築してから現場に臨める体制が作れたのかなと思います。

ーー玉田監督の演出によって、今回のドラマ化ならではの表現に仕上がったと感じた、印象に残っているシーンはありますか?

近藤:第3話で心と小夜がラブホテルに行った後の帰り道に、2人が喋りながら歩いているシーンです。シナリオ上では、2人がただ必要なことを話しながら歩いているだけなんですが、玉田監督の演出によって、恋人たちのちょっとしたやりとりを加えてもらい、恋人同士のかけがえのない愛おしい時間が流れる素敵なシーンに仕上げていただきました。

気合が入った鈴鹿央士のおんぶシーン

ーー近藤さんが今回オファーに至ったメインキャラを演じる3人の魅力を教えてください。

近藤:心は一見すると優柔不断なキャラクターですが、鈴鹿さんが持つ柔らかい雰囲気とチャーミングさが相まって、多様な魅力が表れているなと感じます。小西(桜子)さんは過去作を観ていて小悪魔的な魅力のイメージがあったので、そこがりんごと実際にハマったなと。りんごの持つ儚さや、反対に情熱的な部分を、小西さんが持つ魅力によってより伝えることができました。田辺(桃子)さんは、今回実際にお会いしてから、凛として優しい雰囲気の中にある芯の強さを感じました。今までは大人っぽい役柄が多い印象でしたが、キャスティングしたらとても役とぴったりで嬉しかったです。

ーー撮影現場での3人のバランス感はどうでしたか?

近藤: 3人ともお芝居が上手なので、会話劇のシーンが多くても淀みなくテンポよく進んでいくのが、現場で見ていてもすごいなと感じました。小西さんと田辺さんが、可愛らしさとクールビューティーさという、異なる系統のヒロインとしてすみ分けができたので、そこに挟まれる心という構図がビジュアル的にも表現できたと思います。

ーー主人公の心の魅力を特に感じたシーンはありますか?

近藤:第1話で小夜とキスするシーンは、心のいろんな魅力が醸し出たシーンになったと思います。“優柔不断で女性に振り回される弱気な男の子”というだけじゃない、女の子をキュンとさせてしまうようなチャーミングさやキュートさを加えたお芝居をされていて、心の魅力が出せました。

ーー小夜とりんご、それぞれとのシーンでみせる心の印象も違いますよね。心とりんごとのシーンではいかがでしょう?

近藤:第2話の心とりんごのシーンは、鈴鹿さんが映像作品で初めて女の子をおんぶすると伺ったので、すごく気合が入りました。素晴らしい夜景をバックに背負って、2人のエモーショナルな瞬間を切り取れたのでとても満足しています。何回も橋を往復したりしていたので、鈴鹿さんを疲労させたかもしれません(笑)。

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