『わたしのお嫁くん』は“役割”ではなく“存在”のこと 高杉真宙&波瑠の愛に溢れた最終回

「山本くん、俺んとこ、嫁に来ん?」

 調理家電の開発に特化した子会社立ち上げメンバーとして古賀(中村蒼)が福岡行きに声をかけたのは、山本知博(高杉真宙)だった。

 本社の総務部で働くよりも商品開発に携わるという自分のやりたいことに近づけるため、福岡行きに前向きな山本。しかし、次期管理職と目されており仕事も忙しい中、家事が不得意な速見穂香(波瑠)を一人置いて行くことが気がかりなようだ。

 「ちょっと距離置いた方がいいかも。私たち」と前話で切り出した穂香から、ついに「別れよう、私たち」という言葉が飛び出した『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)最終話。

 仕事をしながらも家事特訓をこなそうとする穂香の「絶賛特訓中」「仕事っていうよりも家事が大変」という言葉に、どこか“出来て当たり前”だと思われている家事の難しさや大変さ、それにも得手不得手があることが改めて描かれる。“布団干し特訓”など書き連ねられたto doリストの多さに「家事」と一口に言ってもその範囲は実に多岐に渡り、それぞれの家事をこなすための前捌きが発生し、いかに“名もなき家事”が多いかもわかる。

 あまりに不慣れな穂香の様子に呆れた山本は、自分は福岡には行っても毎週末東京に帰ってきて家事をこなし、1週間分の作り置きをしておくから「先輩は無理して苦手な家事をしなくていい」と言う。抜群の家事能力を誇り気配りまでできてしまう山本ゆえ、いつだって彼の方が無自覚にも自己犠牲を当たり前のように差し出してしまう。片方だけに過度な負担や縛りを課してまで一緒にいる生活はいつか破綻してしまう。そんな一方的な“お嫁さん”ならいらないと穂香は別れを切り出したのだ。

 最初は自身にない家事能力を持つ家事神の山本を“お嫁くん”として迎え入れた穂香だったが、互いの好意をベースとした共同生活の上では対等でありたいのだろう。それは別に家事負担を完全に半々にするということではなく、得手不得手を考慮して互いの凹凸を埋め合おうとすることなのだろう。山本の両親が互いに仕事人間ゆえ離婚したわけではなく、その原因はもっと別のところにあったように。山本の兄・正海(竹財輝之助)と薫(古川雄大)が言う通り「大事なのは二人らしい形を見つけること」で、カップルの数だけ最適解があるのだろう。

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