『波よ聞いてくれ』笑いと感動の最終回 小芝風花の鼓田ミナレに再会できることを願って
「あたしの声はちゃんとお前らに届いてて、それを受け取ってもらうことにもちゃんと意味あって……あたしはラジオパーソナリティーやってんのがスッゲェ楽しいんだなって、それに気づかせてくれてありがとう!」
夢や目標もなくフラフラと日常をさまよい、男に金を騙し取られてやけ酒を搔っ食らう。そんなミナレ(小芝風花)がひょんなことからラジオパーソナリティーとしてデビューし、人生挽回のチャンスを手に入れるところから始まったドラマ『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)。全8回に渡って2,234行もの膨大な台詞量をこなし、その喋りで人々を圧倒させる類い稀なミナレの才能を見せつけた小芝風花への称賛の嵐が止まらない。一寸先も見えないカオスな展開の中にラジオというメディアに携わる人々の熱い魂が宿るこの物語は、彼女がいなければ成立しなかったであろう。最終回もまた、それを強く実感せざるを得ないエピソードが描かれた。
これまで自分をラジオの世界に引き入れた麻藤(北村一輝)のムチャぶりに半ばやけくそで応えてきたミナレ。常に行き当たりばったりな自分の性格を呪い、どうにか日々に秩序を取り戻したい彼女だったが、結果的にはラジオパーソナリティーになっても変わらなかった。性格上、MRSの人気パーソナリティー・まどか(平野綾)のようにリスナーの悩みに優しく寄り添うこともできなければ、制作に携わる瑞穂(原菜乃華)や久連木(小市慢太郎)のようにラジオに思い入れがあるわけでもない。そんな自分がこのまま番組を続け、声を届けることに何か意味があるのか。ラジオ業界の最大イベント「ジューンブライド・ラジオ」の出演者候補に挙がったことでミナレは、そう自問自答する。
その矢先、ミナレの前に現れたのが母・唯(高島礼子)だ。久連木を誘拐した犯罪組織の一味を撃退したり、家庭内立てこもりをきめる青年にプロレス技をお見舞いしたりと、やたらミナレが戦闘に長けているのはこの母がいるためだろう。自分との話し合いに応じない娘をやすやすと投げ飛ばす唯はちゃらんぽらんな父・マコト(立川談春)とは違い、しっかり者のようだ。ただ、唯一の弱点であるダメ男好きの遺伝子を受け継いでしまったミナレを心配し、見合いの話を持ちかけにきたのである。
勝手にバイト先のスープカレー店「VOYAGER」に辞表を提出するなど、強引に自分を地元に連れ戻そうとする唯に抵抗したいミナレ。しかし、店長の宝田(西村瑞樹)は嬉々として退職を受け入れるわ、前述したようにパーソナリティーとしての仕事もいまいちしっくりこないわで為す術がない。そんな中、ミナレが暮らす舞波町で大地震が発生。ミナレは身を挺して自分を守ってくれた母の愛情を感じつつ、麻藤に呼び出され、停電で暗闇の中、瑞穂とともにラジオ局に向かうのだった。
こうした緊急事態において、リアルタイムでの被害状況や身の安全を確保するための情報をいち早く流す役割を持つラジオ。それももちろん大事だが、不安に押し潰されそうになっている人たちを安心させることも自由度の高いラジオの重要な役割だと麻藤は考えていた。だからこそ、ミナレを呼んだのである。いつもと変わらない彼女の声とともに、「一人じゃない。大丈夫だ」というメッセージをリスナーのもとへ届けるために。