『Rodeo ロデオ』監督が語る、アメリカ映画からの影響と#MeToo以降のフランス映画界

ギャング映画やウエスタンなどアメリカ映画からの影響

ーー音楽的にはアメリカのラップミュージックからの影響が強いようですが、作風的にもアメリカ映画からの影響を強く感じました。

キヴォロン:私自身、たくさんの映画を観てきましたが、小さい頃に観たジェームズ・ディーンの『理由なき反抗』との出会いが、今の私にとっては非常に大きかったですね。それと個人的に、アクション映画やギャング映画など、70年代のアメリカ映画がすごく好きなんです。ドキュメンタリータッチで社会問題を扱いつつ、物語的にも非常に魅力的な語り口を持っている作品ですね。例えば、アル・パチーノが出演していた『哀しみの街かど』(1971年)などがそうです。あとは、様々なジャンルが交錯するという面で、ジョン・カーペンターの作品からも大きな影響を受けています。アメリカ映画は、神話的な世界を描くことに長けていると思います。その一例がウエスタンですよね。実際に『Rodeo ロデオ』にも、テリトリーを巡っての争いや、自由を求める動きなど、ウエスタン的な要素があると思います。オートバイという乗り物が、ウエスタンにおける馬という考え方もできますから。

ーーこの作品は“#MeToo以降の映画”という文脈で語られることも多い思いですよね。この作品のために特別に賞(ある視点部門クー・ド・クール・デュ・ジュリー賞)が設けられたカンヌ国際映画祭でも若手女性監督が台頭するなど、ここ数年、フランス映画界にも変化が表れているように思うのですが、あなた自身は現在のフランス映画界をどのように見ていますか?

キヴォロン:#MeToo運動はフランスのみならず世界中でムーブメントになりましたし、そういう問題意識は高まっていると思います。『アトランティックス』のマティ・ディオップや『サントメール ある被告』のアリス・ディオップ、『TITANE/チタン』のジュリア・デュクルノーなど、非常に力強い作品を生み出す若手女性監督が台頭しているのも事実ですが、私自身はバイナリー、男女をはっきりと分けるような枠組みに対しては常に懐疑的でもあります。ただ、これはフランスの文化的な習慣なのかもしれませんが、依然として女性監督に与えられる資金が男性監督と比べて少なかったり、プロモーションにかけてもらえる予算が少なかったりします。実際にそういう格差はまだまだ残っているので、そこは常に平等化を目指すことを意識して、これからも闘っていかなければいけないと思っています。

ーーありがとうございました。では最後に今後の監督作について、話せる範囲で構わないので教えてください。

キヴォロン:いまは2つの長編作品を進めています。特にシナリオが進んでいるプロジェクトの方について言うと、これは私の母方の家族の話に基づいたマフィア映画です。1980年代のフランス・ナントを舞台に、マフィア映画を女性的な視点で描くもので、私の祖母や子供の頃の母が出てきます。ぜひ楽しみにしていてください。

■公開情報
『Rodeoロデオ』
全国公開中
出演:ジュリー・ルドリュー、カイス、ヤニス・ラフキ、アントニア・ブルジ、コーディ・シュローダー、ルイ・ソットン、ジュニア・コレイア、アハメッド・ハムデイ、ダブ・ンサマン、ムスタフ・ディアンカ、モハメド・ベッタアール、クリス・マコディ、ジャンニ・カイラ、クェンティン・アリジ、ブリス・ストラエイリ、セバスティアン・シュローダー
監督・脚本:ローラ・キヴォロン
共同脚本:アントニア・ブレジ
キャスティング:ジュリー・アリオーヌ
撮影:ラファエル・ヴェンデンブスッシュ
録音:ルーカス・ドムジャン、ジョフリー・ペリエ、ヴィクター・プロー
編集:ラファエル・トレス・カルデロン
特殊効果:アンソニー・レストルモー
ミキシング:ヴィクター・プロー
美術:ガブリエル・デジャン
衣装:ラシェール・ラウルト
スタント:LMスタント
音楽:ケルマン・デュラン
プロデューサー:シャルル・ギルバート、CG CINÉMA
配給 : リアリーライクフィルムズ、ムービー・アクト・プロジェクト
提供 : リアリーライクフィルムズ
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