Netflix『君に届け』、映画版との違いは? 南沙良×鈴鹿央士がみせた“誤解”とその先

 また、青春映画における学生時代の思い出として、文化祭やスポーツ大会はもちろん、夏の肝試し、冬のクリスマスパーティーなどがよく描かれるが、本作も例外ではない。席替えや放課後の図書館で勉強するシーンもあり、高校の3年間で体験する思い出が凝縮されていた。そして爽子の誕生日である大晦日のシーンは、原作読者からしても名場面と言えるだろう。あのシーンで二人の距離はぐっと縮まった。そして風早と爽子の告白のシーンは、映画とドラマでは違いがあるものの、“言葉足らず”ですれ違ってしまうのは同じだった。

 本編のセリフの中には何度も「誤解」というワードが出てきた。避けられ慣れてきた爽子は自分が誤解されやすいと知っていて、風早との関係をみんなの前で弁明したり、あやねと千鶴の悪い噂が流れた時には自分のせいだとわかると距離を置いて逆に疑われてしまったり。そんな紆余曲折があったからこそ、お互いに気持ちが“届いた”瞬間は、達成感や嬉しさを何倍にもさせる。さらに、風早に対しても、両親に対しても自分の気持ちに正直になれない爽子に、面と向かって感情を表してアドバイスをする千鶴とあやねの言葉にはどんな人も動かされるに違いない。

 爽子は「貞子」と言われ、呪われるという噂も流れ、ひどい言葉が飛び交っているにも関わらず、内面は実に強い人間だ。怖いと言われる自分を肝試しで活かして役に立ちたい。そう思えるのは、風早も「超ポジティブシンキング」と言うくらい、かなり前向きではないだろうか。嬉しい時は嬉しさを表現する、その純粋さに人は惹かれていく。単純なことだけれど、自分らしさを消さずにいれば、生涯大事にしたい人たちに恵まれることを本作は教えてくれている。

■配信情報
Netflixシリーズ『君に届け』
Netflixにて世界独占配信中
出演:南沙良、鈴鹿央士、櫻井海音、久間田琳加、中村里帆、香音、鈴木康介、鈴木仁、犬飼貴丈、安井順平、馬渕英里何、戸田菜穂、平山浩行、杉本哲太、三浦翔平
原作:椎名軽穂『君に届け』(集英社『マーガレット コミックス』刊)
監督:新城毅彦、菊地健雄
脚本:宮本勇人
主題歌:川崎鷹也 「愛の歌」(Warner Music Japan Inc.)
プロデューサー:松本拓(テレビ東京)、森川真行(ファイン)、清家優輝(ファイン)
共同プロデューサー:伊藤寿浩(ファイン)
制作著作:テレビ東京
制作協力:ファインエンターテイメント
©椎名軽穂/集英社・「君に届け」テレビ東京

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